【子季語】
【関連季語】
常盤木落葉
【解説】
万緑の中、まるで病めるかのように一、二枚、緑を失った木の葉を見つけることがある。病害虫や風通しの悪さなどが災いする。黄色や褐色に変色し秋でもないのに落葉する。緑陰で拾ったりすることもある。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【例句】
わくら葉の落つる間宿る太山(みやま)かな
青蘿「青蘿発句集」
わくら葉の梢あやまつりんご哉
蕪村「落日庵句集」
病葉や学問に古る白浴衣
原石鼎「原石鼎全句集」
【子季語】
若葉の楓、楓若葉、青楓
【関連季語】
楓の芽、楓の花、紅葉
【解説】
楓の若葉のこと。楓は、秋の紅葉もさることながら、初夏の若葉の美しさもまた格別のものがある。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
散はてし桜が枝にさしまぜて盛りとみするわかかへでかな 藤原為家『夫木和歌集』
卯月ばかりの若楓、すべて、よろずの花紅葉にもまさりてめでたきものなり。『徒然草』(139段)吉田兼好
【科学的見解】
楓は、カエデ科カエデ属の植物の総称であり、日本には在来の楓として二十六種が自生している。代表的な楓としては、イロハモミジが知られており、山野に自生する他、公園や庭木として植栽されている。イロハモミジの園芸品種も多数作出されている。(藤吉正明記)
【例句】
都出て又宮古ありわか楓
支孝「東西夜話」
三井寺や日は午にるせまる若楓
蕪村「新花摘」
雨重き葉の重なりや若かへで
太祇「独喰」
公達の手ならひの間や若楓
涼莵「浮世の北」
若楓硯のうへを風とほる
長谷川櫂「果実」
【子季語】
木の下闇、下闇、青葉闇、木の晩、小暮
【関連季語】
緑陰
【解説】
鬱蒼と茂る木立の下の暗がりのこと。昼でも暗く涼しい。夏の強い日差しのもとでは闇のようである。
【来歴】
『俳諧御傘』(慶安4年、1651年)に所出。
【文学での言及】
木の暗の繁き尾の上をほととぎす鳴きて越ゆなり今し来らしも 大伴家持『万葉集』
望月の駒牽く時は逢坂の木の下闇も見えずぞありける 恵慶法師『後拾遺集』
【例句】
須磨寺や吹かぬ笛聞く木下闇
芭蕉「笈の小文」
霧雨に木の下闇の紙帳かな
嵐雪「小弓俳諧集」
灰汁桶の蝶のきげんや木下闇
一茶「文化句帖」
あゆみあゆみあとや見らるる木下闇
千代女「真蹟」
滝の音四方にこたへて木下闇
蝶衣「蝶衣句集」
水甕のみづに穴ある青葉闇
長谷川櫂「古志」
【子季語】
茂み、茂る、野山の茂り、茂り葉
【関連季語】
万緑、草茂る
【解説】
夏、草木が盛んに枝葉をおい茂らせること。鬱蒼とした樹木は、夏の強い日差しを遮り、暗い森の中の「滴り」をさそう。山全体の茂もさす。樹木だけではなく、草むらにも用いる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
茂りゆく軒の木蔭の雨のうちになほ雲暗き夏の空かな 藤原為家『夫木和歌抄』
【例句】
嵐山藪の茂りや風の筋
芭蕉「嵯峨日記」
光り会ふ二つの山の茂りかな
去来「枕かけ」
伊香保寝や茂りを下る温泉の煙り
一茶「寛政句集」
貝吹けば小虫こぼるるしげりかな
梅室「梅室家集」
道ばたに只一本の茂り哉
正岡子規「寒山落木」
棹伏せて舟すべり入る茂かな
長谷川櫂「虚空」
【子季語】
朴若葉、藤若葉、若葉寒
【関連季語】
青葉、草の若葉、茂、新緑、新樹
【解説】
おもに落葉樹の新葉のこと。やわらかく瑞々しい。若葉をもれくる日ざし、若葉が風にそよぐ姿、若葉が雨に濡れるさまなどいずれも美しい。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
かげひたす水さへ色ぞ緑なるよもの梢の同じ若葉に 藤原定家『夫木和歌抄』
【実証的見解】
「青葉」という季語もあるが、季語としては若葉より歴史が浅い。芭蕉がおくの細道の途中、日光で「あらたふと青葉若葉の日の光」と詠んだ当時はまだ青葉は季語ではなかった。「朴若葉」などと柿や椎、樟など樹種を冠して詠んだり、「山若葉」などと里や庭、谷など場所を冠して詠むことも多い。
【例句】
若葉して御めの雫ぬぐはばや
芭蕉「笈の小文」
又是より若葉一見となりにけり
素堂「山口素堂句集」
若葉ふく風やたばこのきざみよし
嵐雪「玄峰集」
若葉吹く風さらさらと鳴りながら
惟然「惟然坊句集」
不二ひとつうづみ残してわかばかな
蕪村「蕪村句集」
絶頂の城たのもしき若葉かな
蕪村「蕪村句集」
濃く薄く奥ある色や谷若葉
太祇「太祇句選」
若葉して又もにくまれ榎哉
一茶「題叢」
雨雲の谷にをさまる若葉かな
正岡子規「寒山落木」
【子季語】
夏木、夏木蔭
【関連季語】
木下闇
【解説】
夏、青々と葉を茂らせた木立をいう。生命力みなぎる木々の日陰は、人々にほっと息をつかせる場所である。「夏木立」は数本をさし、一本の木のときは「夏木」という。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
いざ住まむ夏の木立のこのもとにしば青みゆく岡の辺の里 慈鎮和尚『夫木和歌抄』
【例句】
先づ頼む椎の木も有り夏木立
芭蕉「猿蓑」
木啄も庵は破らず夏木立
芭蕉「奥の細道」
なつ木立はくやみ山のこしふさげ
芭蕉「音頭集」
いづこより礫うちけむ夏木立
蕪村「蕪村句集」
動くともなくて恐ろし夏木立
蕪村「落日庵句集」
夏木立幻住庵は無かりけり
正岡子規「春夏秋冬」
大夏木日を遮りて余りある
高浜虚子「六百五十句」