リレーエッセイ024 十三夜 髙田正子
十五夜を過ぎたころ、こんな会話を耳にした。
「お月見って二回するらしいわね」(そうそう)
「そう聞きますねえ。でも十五夜のときしか話題にならなか
ったわね」(え、過去形?)
「芋とか栗とか言うけれど、栗、まだ供えられないし」
ここまで聞いて分かった。十五夜と十三夜、どちらも仲秋の名月に関わるものととらえられていたのだった。
ひとたび歳時記を持ってしまうと、この会話は成り立たなくなる。だから、そのときは目から鱗が落ちるほど驚いたのだった。が、俳句を作らない人としては、彼女たちはむしろ季節感に敏い人たちなのだと思う。歳時記を持っているだけで月見をしない人、いるでしょう?
家庭持ちの場合、家族全員の気持ちが揃わないと、月見のムードにならないということもある。
今年の十三夜は十月九日。我が家では夫の誕生日と重なった。さらによいことに日曜日である。誕生日の支度だよーという顔をしながら、十三夜十三夜とつぶやくことにしよう。ちょっと渋い支度になりそうな気がするけれど。(季語歳理事、写真=栗)
