リレーエッセイ027 クリスマス 大塚哲也
今、ここに一枚の写真がある。男性ひとり原宿駅前の歩道橋の欄干に手をかけ、こちらを向いている。45年前の亡き父である。彼は紺色のダッフルコートを着ていた。そして、そのダッフルコートを今、私が着ている。
トグルとループが切れてしまい、この冬直しに出した。数週間後に直ったコートを受け取ると、子供の頃にクリスマスプレゼントを受け取った時のような嬉しさがこみあげてきた。45年間という歳月を感じさせるほどの着心地に加え、新しくなったのはトグルとループだけのはずなのに、コートそのものがすべて新しくなったような新鮮さを覚えた。
そういえば父は、私が幼い頃、まるでサンタクロースが届けてくれたように見せるために、腕から手にかけてだけのサンタを作り、枕元に置いたプレゼントともに写真を撮った。私はその写真を見て、作り物だとすぐにわかったが、子供ながらに父の優しさがありがたく、気付いてないふりをした。
あのダッフルコートはそんな父の温かさが今も残っている。私も子供を持ったら、いつかこのコートを譲ろう。その時に、父のように私も温かさを伝えられるだろうか。そうだ、子供へのクリスマスプレゼントにしよう。そんな夢を与えてくれる、ダッフルコートは今日も温かい。(季語歳スタッフ、写真=ダッフルコート)
