リレーエッセイ029 大晦日 川村玲子
大晦日の夜は、おせちを作りながら今年一年のクラシックハイライトをみる。自分から進んでは行かないようなコンサートに印象深い曲を発見することがある。タン・ドゥンの交響曲1997「天・地・人」にはこうして出会った。
湖北省の墓から発掘されるまで2400年間地下で眠っていた65個の鐘の音に、天国的な声の子供たちが歌う中国の古い恋歌「ジャスミンの花」、香港で街頭録音された路上歌劇、戦時の苦難の歌、春節の龍の踊りなどがひびきあって、春の扉を叩く鐘の音となってゆく。わが家のささやかな年用意が一段落して、きこえてくる近所のお寺の除夜の鐘も、さかのぼればこの古代の鐘の音とひびきあうものかもしれない。
釜石市に鎮魂と復興の鐘が設置されて、大晦日に打ちはじめられるという。今年は多くの思いが鐘の音と共に、新しい年への峠を越えるのだろう。(きごさい監事、写真=千両)
