リレーエッセイ030 七種 福島光加
五節句のはじめといえば まずはこの七種。つまり人日の節句だ。いけばなに関わるものにとってそのあとの節句にいけるものは 桃 菖蒲、竹、菊 と続いていく。この年の初めの節句だけはどうも花いけにむすびつかないのは春の七草が鑑賞より食用としての植物として捕らえられているからだろう。
一方、秋は 山上憶良の詠む〔秋の七草〕がある。現代ではさすがにそれらの植物全部をそろえるのは不可能に近いが、それでもこの頃にはこの季節ならではの美しい植物が多く私の稽古場では多くの種類の植物をひとつの作品にいける(まぜざし)という稽古をおこなうこともある。
もともとわれわれが花に対して強い関心を持っていたのは花の色や大きさまた咲き具合、いつ咲いた、などが実際の秋の実りを占うひとつの手がかりだと考えていた農耕民族だからだろう。
この七種の日、まずは春浅い大地からのメッセージを私たちは受け取り七草粥を口にすれば年始のご馳走で疲れた胃に温かいものが通っていき体そのものを温めていく。七草粥そのものはそれぞれの地方家庭によりことなり、我が家は具沢山だったという人もいれば鳥肉まで入れた、という人もいる。家は確か早々と、このとき小豆粥だった記憶がある。
七種を境にして私はいけた正月花にかけた水引をはずす。正月気分などとっくにどこかに消えていったとはいえ水引をとるときはすこしだけ何か特別な思いがある。
新しい年の初めの一週間の終わり。これからの一年間どんなになるのだろう。一年後も正月のためにいけた花に華やかに水引をかけることが出来ますように、と。
一連の年末年始の行事も峠をこし、少しだけ心に余裕ができ、改めて自然の恵みを思い返し、この国でこれからの一年間、すべての人が健康で幸多かれと願うのがこの七種の頃であるのかもしれない。(きごさい理事、写真=七種籠)
