リレーエッセイ036 東日本震災忌 北側松太
その日が三月十一日。「きごさい」がブログ「震災をよむ」というサイトを立ち上げて、俳句や短歌を募ったのが三月十三日のことだった。
このような時期に俳句や短歌を詠んだところで、被災者の心理を逆撫でするだけのこと、という非難もあったが、そうした冷ややかな視線もあって当然と認めた上でのサイトの立ち上げだった。結果、ひと月ほどで千ほどの投稿をいただき、小冊子を発行することもできた。
一年を経て、それらの作品がどういう意味を持ったかは定かではない。ほとんどは忘れ去られる定めにある詩歌であろうが、詠まずにはいられなかったという体験はけっして無駄ではなかったはずだ。「東日本震災忌」という新しい季語は、そうして忘れ去られようとしている多くの詩歌を礎にした季語でもあるだろう。
今年も、庭にふきのとうが五つ六つ芽生えた。梅が開き木蓮の莟がふくらみはじめた。雁や白鳥が北へ帰り、みちのくの空には春の雪が舞う。「東日本震災忌」はそういう印象深い季節の、春の寒さがいくらかは残る季語でもある。(季語歳理事)
