リレーエッセイ045 土用餅 中山圭子
今年の夏の土用は7月19日~8月6日。丑の日の27日には、夏負けしないよう、鰻の蒲焼を食べる人が多いのでは?
スーパーやデパ地下の広告も効を奏してか、鰻は土用の行事食として定着しているようです。きっかけをつくったといわれるのは、江戸時代の学者、平賀源内(1728~79)。知り合いの鰻屋のために、「土用の丑の日は鰻の日」として宣伝文句を書き、当たったとのこと。土用餅の存在を知ってほしい和菓子ファンとしては、なぜ前置きに「土用の入りは土用餅」を入れてくれなかったのかと惜しむばかり。一言あったなら、土用餅は端午節供の柏餅や粽のように、行事菓子として誰もが知るところになったかもしれません。
土用餅は江戸時代中期には存在し、砂糖餅や餡餅、地域によっては蓬餅として作られていました。夏ばてを避ける意味で、甘いもの、身体によいものを食べて体力をつけようという生活の知恵だったのでしょう。特に餡の材料となる小豆はビタミンB1を多く含むなど、栄養価に富む上、赤い色が悪いものを払うという民間信仰があり、病除けにはおすすめ。
現在も土用餅は餡餅として販売されることが多く、ミネラルなどが豊富な黒糖入りの餡にしている店もあります。色合いは地味ですが、土用餅は元気の源。先人にならい、この時期に味わって猛暑を乗り切りたいものです。
(虎屋虎屋文庫専門職、写真=土用餅、写真提供=虎屋)
