第15回恋の俳句大賞(2021年前期)該当作なし
恋の俳句大賞は選者の特選句から選びます。今回は残念ながら該当作がありませんでした。
☆趙栄順 選
感想
今回も様々な恋の思い出や経験を楽しく読ませていただきました。ただ、経験や思い出をそのままなぞっても,俳句にはなりません。あなたの想像力で言葉を飛躍させてください。
【特選】
初蝶やふわりと逃げる君を追い 森教安
追いかければ逃げる恋のもどかしさ。初蝶の陰影が美しい。
蝉時雨君と出会って止みにけり 八ツ田慧
あなたといれば時が止まる。音が止む。あまりにストレートな恋の実感。
藍浴衣今宵男をぱんと撃つ 石浜西夏
男子は女子の浴衣姿に弱い。今宵藍浴衣で、彼の心を射止めるつもり。現代的で痛快。
【入選】
恋しくて返す踵や寒の月 清波
しゃぼん玉君より君を知っている 中原壱朋
春の恋 遮断機下りて 遠ざかる 川島英明
守り抜く恋の秘密や生身魂 森凜柚
コロッケをあなたのために夕薄暑 城内幸江
☆長谷川櫂 選
【特選】
まだ居たい 線香花火 落ちるなよ 石王大地
虹二重ふたりの君がゐるやうな 青沼尾燈子
君の手や夏の限りをつないだ手 幸福来々
【入選】
イヤホンの片方もらふ砂日傘 山田蹴人
後ろから不意の目隠し夕涼み 彩香
向こうからカップルの君夏祭 白井百合子
さよならのあとの香水の一瞬 山田蹴人
【選評】
「恋とはこういうもの」という先入観で作った俗悪な句が多かった。そこが低迷の一因かと思う。
☆村松二本 選
【特選】
うつくしい嘘に誘はれ春の月 辻雅宏
嘘と分かっていながら始まる恋もある。
星に寝て恋の夢見る海月かな 川辺酸模
ここには宇宙の摂理の一端が切り取られている。悠久なる一句。
くちづけのように花火の火をもらう 八田昌代
実際は火をもらうだけなのに、それを「くちづけのよう」と思ってしまうのが恋。
【入選】
未練絶つ青磁の皿に水羊羹 神久美子
あの人に少年の顔麦畑 小島寿々
晩夏光恋を埋めし砂の城 岩橋春海
シスターに駆け落ちの過去星月夜 森としたか
春障子大人の恋のはじまりぬ 清波
夏の月君の寝息の正しくて 坂本清美
風鈴が鳴ってこの世に情事あり 野原めぐみ
守り抜く恋の秘密や生身魂 森凜柚
コロッケをあなたのために夕薄暑 城内幸江