6月21日 第38回きごさい+ 報告
鮎の話=釣り、味、歴史 講演= 鈴木康友(つり人社会長)
レポート=西川遊歩

鮎は夏の季語ですが、春や秋にも跨る川の王と呼ばれる魚です。しかし、実際には鮎や鮎釣りについて、深く知っている人は多いとは言えません。鈴木康友さんは、つり人社の編集者であると同時に、優れた釣り人としても名を馳せていて、鮎について、多面的な視点から映像と体験に基付くレクチャーは、大好評でした。
☆縄張りに侵入した野鮎を追い払う習性を利用した友釣り“。
針に付けたエサを食わせる釣りではない友釣りは、鮎の習性を利用したユニークな釣りである。縄張り意識の強い鮎は、侵入してくる鮎に激しくアタックするところを、囮鮎に仕組んだ針に掛ける。その行動のパターンと囮と仕掛けの仕組みの説明がなされ、友釣りの面白さが伝わって来ました。
鮎は清澄な川が生活圏ではなく、石に苔が付く流れを好む、という話題をきっかけに、日本の川についての現状が語られました。友釣り以外の釣り方としては、ドブ釣り、コロガシ釣り、サクリ釣り、ルアー釣りなど。友釣りの人たちは、他の釣人と比較すると長時間川に居る傾向が強いそうです。
友釣りの時代の移り変わりを映像にて説明。竹竿時代から、今は、スペースシャトルにも使用される新素材の鮎竿の時代です。ナイロン、フロロカーボン、金属、ハイブリッド、新素材の開発と釣り人のさらなる工夫が、釣り方をさらに進化させます。
糸は細くて丈夫で結びやすいものが商品化され、ハリ先も薄く鋭く強靭となり、長時間、川に立ち込んでも冷えないウエアも開発されています。日本の釣り具制作技術は世界最高レベルであることを知り、その技術の競い合いも垣間見えました。道具の歴史の場面で、昭和の狩野川の解禁日の写真が出て、釣り人のごった返す数の多さに、竿の乱立する風景にびっくりしました。
☆友釣りの名人たちと鮎の塩焼き
毎年、鮎釣りの大会が、全国のあちこちの川で開かれます。そこでの優勝者や上位入賞者の常連は、メディアの露出が多くなり、鮎の友釣りの名人として有名になり、釣り道具のテスターなどを依頼されるようになります。しかし、鮎釣りのプロの制度は無く、その魅力にはまり込んで、人生を台無しにする人もいるそうです。名人級の釣り人の川の流れや鮎の動きを見る五感と知見は凄まじく、独自の仕掛けを考案して、短時間に驚くほどの釣果をあげる力は想像以上のものがあります。
鮎の味は、川ごとに異なります。鮎の食べ方で一番おいしのは、塩焼きで、とくに美味しい川は、中部地方です。美濃の民宿の女将さんの塩焼きの写真が映し出され、頭まで柔らかく食べられる極意が語られました。五面焼きとか串の打ち方とか、要はじっくり丁寧に焼くことが、美味しさのポイントです。天然と養殖の違い、食べる部位の順番……塩焼きについては、会場から多数、質問が出ました。川の特徴を語りつつ、環境や外来種の問題に触れられていたことも印象的でした。
☆釣りが巧い編集者と釣りキチ三平
鈴木康友さんは、編集者として鮎だけでなく、他の釣りにも長けていて造詣も深い。バスフィッシングではカリフォルニアの大会で優勝、アラスカのサーモンダービーでも優勝・・・国内だけでなく海外五十か国での活動、取材もされていています。様々な釣りのジャンルの知識と人脈を、「釣りキチ三平」の作者の矢口高雄さんに惜しみなく提供し、いわば三平の影武者的存在です。漫画はモデルが存在しても別名になっていますが、唯一「呪い浮き」の巻は鈴木さんが実名で登場しています。
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レクチャー終了後、活発な質疑応答で盛り上がりました。鮎釣りは、男の世界ですが、今回、聴衆は女性の方が多かったのが特徴的でした
最後に、代表が友釣りの起源と球磨川の鮎についての質問をされました。球磨川の鮎は、日本一大きいサイズが特徴で、尺鮎に出会える鮎釣りのメッカの川のひとつだそうです。数年前に、人吉から八代へ向かっている途中、球磨川沿いの食事処に「鮎の塩焼き」の幟を発見、そこで食べた鮎の大きさと黄金色の美しさに驚いた記憶が甦りました。
句会報告
講演の後、句会が開催されました。 選者:鈴木康友 西川遊歩、長谷川櫂
鈴木康友 選
【特選】
旧道や店はおでんと鮎の串 森永尚子
酒一合鮎のこぼせし化粧塩 森永尚子
釣りてすぐ放つや囮鮎として 金澤道子
万物の鼓動のごとき鮎の竿 村山恭子
手の込んだ料理にまさる焼鮎よ 田中益美
【入選】
骨酒の器も鮎のたたずまひ 橘まゆみ
六月の鮎骨まで食ふや美味し 上松美智子
鮎飯の炊きあがるまで夕寝かな 森永尚子
岩床のひかりの綾に鮎遊ぶ 長谷川櫂
きらきらと朝日に鮎の釣られけり 金澤道子
紀の川の御用鮎師の気骨かな 西川遊歩
鮎の肌流れに磨かれ光り生む 佐藤森恵
西川遊歩 選
【特選】
夕あかね鮎一匹も釣れぬ日の 矢野京子
きらきらと朝日に鮎の釣られけり 金澤道子
雲走る大峰山や鮎の竿 玉置陽子
激流に浮かぶ一軒鮎の宿 飛岡光枝
鮎釣の一人一人の静寂かな 飛岡光枝
川の香の馥郁と鮎焼かれけり 長谷川櫂
【入選】
囮鮎あぎとふ水の青さかな 飛岡光枝
力ならどこにも負けぬ土佐の鮎 森永尚子
鮎飯の炊きあがるまで夕寝かな 森永尚子
串鮎の己の香りを知らぬまま 佐藤森恵
四万十は鮎も千草の匂ひかな イーブン美奈子
語らひて鮎釜めしのほのぼのと 鈴木美江子
鮎食うて明日の泳ぎの達者なる 村山恭子
鮎の宿豊かに濡れる雨の川 上村幸三
吉野芳き川に佳き鮎小ぶりにて イーブン美奈子
背にふたつ嘴のあと鮎を焼く 服部尚子
岩喰みて尾はそよぎけり上り鮎 越智淳子
ふるさとの川の匂ひぞ鮎合はせ 葛西美津子
長谷川櫂 選 (推敲例あり)
【特選】
激流に浮かぶ一軒鮎の宿 飛岡光枝
鮎釣の一人一人の静寂かな 飛岡光枝
飛び鮎や闘竜灘は雲の中 玉置陽子
【入選】
きらきらと命戯れ囮鮎 上村幸三
篝火に照るや漆の岐阜団扇 服部尚子
力ならどこにも負けぬ土佐の鮎 森永尚子
鮎飯の炊きあがるまで昼寝かな 森永尚子
水中の鮎友づりの火花かな 西川遊歩
鮎釣りて一生あらかた過しけり 園田靖彦
釣られてはあはれ囮となりて鮎 葛西美津子
