「歌舞伎」に感じる季節 歌舞伎役者 松本幸四郎
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
歌舞伎役者の家に生まれ52年、歌舞伎役者になって46年になります松本幸四郎です。曽祖父・七代目松本幸四郎が九代目市川團十郎に入門して以降、代々歌舞伎役者を生業としています。
四季のある日本で生まれた「歌舞伎」は、季節を敏感に捉えていてそれが作品に影響をしています。お正月は「初春歌舞伎公演」として1月2日から始まります。お正月らしいおめでたく、明るい演目が並び、客席もお着物姿の方が多く劇場全体が彩の鮮やかな空間になります。年末のお稽古があって。元旦のお年始回りそして2日が舞台の初日となりいつにも増して慌ただしいですが、その慌ただしさがお正月を実感できる時でもあります。
2月は節分の日には、舞台の幕間に鬼が出て豆まきを一座でするイベントがあり、4月は桜が舞い散る演目が上演されます。お花見にはあまり行ったことはないのですが、舞台装置の桜の大木が象徴的に描かれている演目に出演すると本物の桜よりも美しさを感じています。
夏になるとお客様に猛暑を忘れていただくために本当の水を使って滝を作り、その中で役者はずぶ濡れになっての立廻りがある作品が上演されます。勧善懲悪は歌舞伎の得意な作品ですが、「夏芝居」と言われる真夏での上演は、ひときわ水しぶきが飛ぶお芝居でお客様に清涼感を味わっていただきます。
冬になると本来無音の「雪」に「雪音」という大太鼓で音を作り、シンシンと降る雪を表現する作品が上演されます。寒さをさらに感じる世界ですが、人と人とが深く繋がる温かな人情話が展開される演目が上演されます。
私は「歌舞伎」によって季節を感じているのかもしれません。全国にある「地芝居」には伝統、そして先人を大切にする日本の温かな心を感じます。日本が産んだ日本らしさを感じる「歌舞伎」、あらゆる時代に生きてきた歴史を紐解く「歌舞伎」を楽しんでいただければと思っています。誰よりも私が楽しんでいるのかもしれませんが・・・。
【筆者略歴】
1973年1月8日生まれ。松本白鸚の長男。79年3月歌舞伎座「侠客春雨傘」で三代目松本金太郎を名のり初舞台。81年10・11月、歌舞伎座「仮名手本忠臣蔵」七段目の大星力弥ほかで七代目市川染五郎を襲名。2018年1・2月歌舞伎座で十代目松本幸四郎を襲名。日本舞踊の松本流家元を兼ねる。屋号は高麗屋。26年1月は歌舞伎座「女殺油地獄」で河内屋与兵衛を演じる。
*各界で活躍している方の「四季のエッセイ」は1、4、7、10月1日に掲載します。
