猪(いのしし/ゐのしし) 晩秋
【子季語】
瓜坊/手負猪/野猪/猪肉/猪罠/猪番
【解説】
偶蹄目イノシシ科の哺乳動物。褐色の体毛に覆われた体は、丸太 のように太く首が短い。猪の子は瓜のように体毛に白い縦縞模様があることから瓜坊という。時に田畑の作物を食い荒らし農村に 被害をもたらす。豚の原種で、山鯨と言われるほど美味。刺身や猪鍋として食す。
【科学的見解】
イノシシは、ウシ目(偶蹄目)イノシシ科の哺乳類であり、大陸のイノシシに対して、東北南部から九州までに分布するニホンイノシシと沖縄に分布するリュウキュウイノシシの二亜種が生息している。
二亜種共に人里周辺の低地から山地の広葉もしくは常緑樹林内を主な生息環境としている。基本的には夜間活動を行うが、昼間でも見られる場合がある。食性としては、植物の根茎や木の実・果実、小型動物を捕食し、さらに近年では個体数が増えているせいか、田畑の作物への食害が拡大している。そのため、檻やくくり罠などを設置して駆除対策が行われているのが現状である。ニホンイノシシは年一回、リュウキュウイノシシは年二回出産し、一度に複数仔を出産する。体に付着した寄生虫類を取り除くため、水田や水辺付近で泥浴びをする性質があり、その場をぬた場と呼んで痕跡(フィールドサイン)の一つになっている。泥浴びをした後は、体を樹木の根元に擦り付けるため、ぬた場周辺の木の根元には泥が付着した痕跡が残る。その他の痕跡としては足跡があり、同じ偶蹄目のシカと足跡が似ているが、イノシシの場合は二つの大きな蹄のすぐ横に副蹄が二つ存在しているため、副蹄の跡の存在でおおよそ区別することができる。(藤吉正明記)
【例句】
山畑の芋ほるあとに伏す猪かな
其角「句兄弟」