玉巻く芭蕉(たままくばしょう/たままくばせう) 初夏
【子季語】
芭蕉の巻葉/玉解く芭蕉/芭蕉若葉/青芭蕉/夏芭蕉
【解説】
芭蕉の新しい葉で、巻かれた状態にあるものをいう。この葉がほぐれると長さ二メートルにもなる広葉となる。巻葉の解ける五月頃の芭蕉が一年を通じて最も美しい。
【科学的見解】
バショウは、バショウ科の大型多年草で、中国から観賞目的として導入され、冬にあまり霜が降りない暖地に植栽されている。世界のバショウ科植物の中では、最も耐寒性のある種の一つになっている。バショウは、幅五十センチメートル、長さ二メートルほどになる大型の葉身を持ち、その葉が展葉する前には、茎内に小さく包まった形で納められている。展葉の過程で、包まった葉が解けていき、玉巻くという表現が充てられている。バショウの葉の生長過程は、平たく大きなものをコンパクトに収納する賢いやり方である。(藤吉正明記)
【例句】
耳目肺腸ここに玉巻くはせを庵
蕪村「蕪村句集」
唐寺の玉巻芭蕉肥りけり
芥川龍之介「澄江堂句集」