鴉の巣(からすのす)三春
【解説】
烏の繁殖期は春で、高い樹の上に巣を作る。普通、木の枝を組み 合わせて作るが、人家に近いところでは、針金のハンガーなども 巣の素材になる。営巣を始めると鴉は警戒心が極端に強くなる。
【科学的見解】
一般的に身近な場所に留鳥として生息しているカラス類は、カラス科のハシボソガラスとハシブトガラスの二種が知られている。それらは、田園風景の広がる里山的な環境や都市環境、自然の多い山地森林等幅広い環境で生息している。食性は雑食性であるが、近年では人間が出したゴミをあさり、都市部で個体数を増やしている。営巣は、大木の梢や鉄塔の高いところで行い、木の枯れ枝や針金等の人工物も活用しながら巣作りをする。その巣の内側は、動物の毛やヤシ科植物シュロの繊維等の柔らかな素材が敷き詰められ、親鳥の愛情が感じられる。繁殖中は警戒心が強くなり、巣の下を人が通ると攻撃する場合がある。(藤吉正明記)
【例句】
巣つくるや憎き烏も親心
白雄「発句題叢」
鴉を揺さぶってをる樵夫かな
大須賀乙字「乙字句集」