末黒の芒(すぐろのすすき) 初春
【子季語】
黒生の芒/焼野の芒/芒の芽
【解説】
早春、害虫の除去や草の生長を助けるため、堤や畦の枯草を焼く。焼いた後の黒々とした野を末黒野とよぶが、そこに先端が炭となって残る薄や、焼けながらも青々と萌え出した薄のことをいう。黒と緑の対照が鮮やかで、植物の生命力を感じさせる。
【科学的見解】
昔から草原は、茅葺屋根の材料や家畜の飼料のためなどに、集落ごとに維持管理が行われてきた。草原は、そのままにしておくと、樹木が侵入し、やがては林となってしまうため、火でそれらを燃やすことで、樹木を排除してきた。草本植物、特にススキなどは、茎の冬芽(成長点)が半地中にあるため、火入れを行っても株は死なない。里の人々は、そのような管理の仕方で、長い間草原を維持し、里山文化を守ってきたのである。ススキは、草原の優占種である。(藤吉正明記)
【例句】
暁の雨やすぐろの薄はら
蕪村「蕪村句集」
ぬれ鶴やす黒の薄分けて行く
大江丸「俳懺悔」