鴇(とき) 三秋
【子季語】
朱鷺/桃花鳥
【解説】
コウノトリ目トキ科の鳥。体長は約七十センチで全身白っぽい。朱色の顔で、下方に湾曲した黒く長い嘴を持ち、春から夏にかけて繁殖する。かっては日本各地に多く生息していたが、乱獲がたたって激減した。現在、野生では中国のみに生息し、中国と日本で人工繁殖が進められている。
【科学的見解】
トキは、トキ科の野鳥で、日本産の個体は絶滅してしまったが、中国から贈られた個体で人工繁殖が成功し、現在では環境保全活動の一環としてそれら個体の放鳥が行われている。そのトキの野生復帰に向けた活動では、放鳥された個体同士で繁殖が行われ、野生化での個体数も近年増加しており、令和四年には五百個体以上の定着及び生存が確認されている。トキは、繁殖期の四月から六月頃頭部から翼にかけて灰黒色の色合いとなるが、非繁殖期である秋から冬にかけてはその暗色がなくなり、羽毛全体が橙紅色を帯びた美しい姿となる。近縁の種としては、クロトキが知られているが、日本への渡来は不定期かつ極めて個体数が少なく、また頭部全体が黒色となることから容易に区別できる。(藤吉正明記)