田螺(たにし) 三春
【子季語】
丸田螺/大田螺/角田螺/長田螺/姫田螺/山田螺/豆田螺/つぶ/たつび/田螺鳴く/田螺取/田螺売
【解説】
タニシ科の淡水産巻貝の総称。水田や池沼などの泥地に棲む。冬は泥中にひそんでいるが、春になり水が温かくなると、泥の上を這いまわる。季語の上では、「田螺鳴く」があるが、実際に鳴くことはない。また、古くは田螺が変じて蛍になると信じられていた。和えるなどして食用ともなる。
【例句】
やはらかな水に角みがく田螺かな
来山「今宮草」
殻捨に出るや昨日の田螺取
也有「鶉衣」
静さに堪へて水澄むたにしかな
蕪村「蕪村句集」
親なしと答ふ淀野の田にし売
暁台「暁台句集」
ふり上る鍬にこぼるゝ田にし哉
千丈「類題発句集」
ほしかげに田にし鳴くなり豊浦寺
大江丸「俳懺悔」
鳴く田螺鍋の中ともしらざるや
一茶「七番日記」
静さに堪へて田螺の移りけり
村上鬼城「定本鬼城句集」
沸沸と田螺の国の静まらず
松本たかし「松本たかし句集」