藪入(やぶいり) 新年
【子季語】
家父入、養父入、里下り、宿入、宿下り、六の餅、十六日遊、親見参
【関連季語】
後の薮入
【解説】
江戸時代、正月十六日に奉公人が休みを貰い、親元に帰ることをいう。親元の遠い者は寺社巡り、芝居見物などをした。盂蘭盆明けの七月十六日にもあり、これは「後の薮入」と呼んだ。
【来歴】
『世話盡』(明暦2年、1656年)に所出。
【実証的見解】
本来は先祖を祀るための休みであり帰郷であったが、その意味合いはしだいに薄れ、奉公人の休みとしての意味合いが強くなった。この日は、奉公人は主人からお仕着せの着物や小遣いをもらって送り出された。現在のような休日制度のなかった時代、薮入りは、奉公人たちにとって首を長くして待つ日であった。
【例句】
やぶいりや牛合点して大原まで
其角「五元集」
やぶ入の寝るやひとりの親の側
大祇「大祇」
やぶ入や浪花を出て長柄川
蕪村「夜半楽」
やぶ入の夢や小豆の煮るうち
蕪村「蕪村句集」
藪いりやよそ目ながらの愛宕山
蕪村「蕪村句集」
やぶいりや守袋をわすれ草
蕪村「蕪村句集」
養父入や鉄漿(かね)もらひ來る傘の下
蕪村「蕪村句集」
やぶ入りは中山寺の男かな
蕪村「蕪村句集」
やぶいりのまたいで過ぬ几巾の糸
蕪村「蕪村句集」
薮入や泪先立つ人の親
一茶「七番日記」
薮入の二人落ちあふ渡しかな
正岡子規「子規句集」