雁帰る(かりかえる、かりかへる) 仲春
【子季語】
帰る雁、帰雁、行く雁、去ぬる雁、雁の名残、雁の別れ、いまはの雁
【関連季語】
雁
【解説】
日本で冬を越した雁が北方へ帰ること。雁は、秋にシベリアなどの寒地から日本に渡ってきて越冬し、春また北方へ帰る。帰雁ともいう。春になると、日本で越冬したさまざまな冬鳥が北方へ帰ってゆくが、雁はなかでも哀れ深いものとして和歌などの詠まれてきた。「雁の名残」「雁の別れ」などの【子季語】に、その思いがこめられている。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
春霞立つを見捨てて行く雁は花なき里に住みやならへる 伊勢『古今集』
【例句】
雨だれや暁がたに帰る雁
鬼貫「婦多津物」
巡礼と打ちまじり行く帰雁かな
嵐雪「己が光」
雁行て門田も遠くおもはるゝ
蕪村「自筆句帳」
歸る雁田ごとの月の曇る夜に
蕪村「蕪村句集」
きのふ去ニけふいに鴈のなき夜哉
蕪村「蕪村句集」
風呂の戸をあけて雁見る名残りかな
几董「井華集」
雨夜の雁啼き重なりてかへるなり
暁台「暁台句集」
かりがねのあまりに高く帰るなり
前田普羅「定本普羅句集」
美しき帰雁の空も束の間に
星野立子「立子句集」