引鶴(ひきづる) 仲春
【子季語】
帰る鶴、鶴帰る、鶴去る、去る田鶴、残る鶴
【関連季語】
鶴来る、鶴
【解説】
日本で冬を越した鶴が北方へ帰ること。鶴は、十月ごろシベリアから鹿児島の出水平野や山口の八代盆地に飛来し、三月ころに帰る。
【科学的見解】
日本で確認されているツル科の鳥類は七種程であり、そのうち北海道に生息するタンチョウヅルだけが日本で繁殖している。その他の種は、冬鳥としての確認であり、飛来数が多い種はナベヅルとマナヅルの二種である。両種は、西日本地域に渡来し、特に近年では餌付けの影響のためか、鹿児島県出水市の平野に一万個体程が集まっている。渡来時期は十二月と一月が多く、その後二月から三月にかけて繁殖地への移動のため、個体数が減少してゆく。(藤吉正明記)
【来歴】
『滑稽雑談』(正徳3年、1713年)に所出。
【例句】
引鶴や蘆辺を出て浦の松
官橋「新類題発句集」
引鶴の声はるかなる朝日かな
蘭更「三傑集」