涼し(すずし)三夏
【子季語】
涼、涼気、涼味、涼意、朝涼し、夕涼、晩涼、夜涼、宵涼し、涼夜
【解説】
夏の暑さに思いがけず覚える涼しさは格別である。流水や木陰、雨や風を身に受けて安堵する涼もあれば、音感や視覚で感受する涼味もある。朝、夕、晩、夜、宵に涼を添え季語をなす。秋の涼は新涼、初涼といい区別する。
【例句】
このあたり目に見ゆるものは皆涼し
芭蕉「笈日記」
涼しさを我が宿にしてねまるなり
芭蕉「奥の細道」
涼しさや鐘をはなるるかねの音
蕪村「蕪村句集」
かけ橋や水とつれ立つ影涼し
麦水「葛箒」
大の字に寝て涼しさを淋しさよ
一茶「七番日記」
涼しさや松這ひ上る雨の蟹
正岡子規「子規句集」
水盤に雲呼ぶ石の影すゞし
夏目漱石「漱石句集」
涼しさや門にかけたる橋斜め
夏目漱石「漱石句集」
無人島の天子とならば涼しかろ
夏目漱石「漱石句集」
涼しさは下品下生の仏かな
高浜虚子「五百五十句」
自ら風の涼しき余生かな
高浜虚子「七百五十句」
風生と死の話して涼しさよ
高浜虚子「七百五十句」
涼しさや錨捲きゐる夜の船
日野草城「花氷」
をみな等も涼しきときは遠(をち)を見る
中村草田男「長子」
どの子にも涼しく風の吹く日かな
飯田龍太「忘音」
水底の砂の涼しく動くかな
長谷川櫂「天球」
涼しさや赤子にすでに土踏まず
高田正子「玩具」