【子季語】
明の春、今朝の春、千代の春、四方の春、花の春、老の春、玉の春、新春、迎春
【関連季語】
立春
【解説】
年の始めをことほいで初春という。旧暦の年の始めは、二十四節気の「立春」のころにあたったので、「初春」と呼んで祝った。新暦に変わって冬に正月を迎えるようになっても、旧暦の名残から年の始を「初春」と呼ぶ。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
九重や玉敷く庭にむらさきの袖をつらぬる千代の初はる 藤原俊成『風雅集』
初春存の花の都に松を植ゑて民の戸とめる千代ぞしらるる 前関白『新勅撰集』
梅の花雪にみゆれどはるの気はけぶりをこめて寒からなくに よみ人しらず『夫木和歌抄』
【実証的見解】
二十四節気は太陽暦に基づいて、一年の長さを二十四に分けたもの。その節入を「立春」や「啓蟄」、「秋分」などの言葉で区切る。二十四節気はもともと中国で生まれたもの。中国では、「立春」と立春の次の「雨水」を含む月を正月として年のはじめとし、これが日本にも伝わって、「立春(現在の二月四日ごろ)」を「正月節」、次の雨水を「正月中」というようになった。以下、啓蟄は「二月節」、春分は「二月中」、清明は「三月節」(以下略)である。旧暦は、月の満ち欠けを基本とした暦であるから、二十四節気に先行して月日が移ろうが、行過ぎれば「閏(うるう)月」を設けて月日を後戻りさせ、基本的には二十四節気に添って進行するのである。
【例句】
初春や恵方に向て岩城山
宗因「梅翁宗因発句集」
初春まづ酒に梅売るにほひかな
芭蕉「真蹟懐紙」
おもしろやことしの春も旅の空
芭蕉「去来文」
こもをきて誰人ゐます花の春
芭蕉「真蹟草稿」
庭訓(ていきん)の往来誰が文庫より今朝の春
芭蕉「江戸広小路」
かびたんもつくばゝせけり君が春
芭蕉「江戸通り町」
誰やらが形に似たりけさの春
芭蕉「続虚栗」
梅柳初春の眼にたしかなり
白雄「白雄句集」
目出度さもちう位なりおらが春
一茶「おらが春」
悪なれば色悪よけれ老の春
高浜虚子「七百五十句」
初春や思ふ事なき懐手
尾崎紅葉「紅葉句集」