名越の祓(なごしのはらえ、なごしのはらへ) 晩夏
【子季語】
夏祓、水無月祓、川祓、七瀬の祓、川社、たかみそぎ
【関連季語】
茅の輪、形代、御祓(みそぎ)、節折(よをり)、大祓
【解説】
旧暦六月晦日に行なわれた大祓いの神事。茅の輪をくぐり、穢れを託した形代を川や海に流すことによって禊をする。現在は太陽暦の六月三十日、または月遅れの七月三十一日に行なわれる。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
みなつきのなごしのはらへする人は千年の命のぶといふなり よみ人しらず『拾遺集』
風そよぐ奈良の小川の夕暮は御祓ぞ夏のしるしなりける 正三位家隆『新勅撰集』
【実証的見解】
もともとは大祓という宮中の行事で、旧暦の六月と十二月の晦日に行われたもの。のちに十二月の大祓は廃れ、疫病などが流行する時期の夏の祓が一般的になった。天皇、皇后、東宮のための大祓は「節折」といい、竹でそれぞれの体を測り、測った長さに竹を折るという儀式。名越の祓の主なものは、茅の輪、形代、川社などである。各地の神社で見られる茅の輪は、茅萱を束ねて輪にし、参詣者にくぐらせて祓いとするもの。人形(ひとがた)や形代は、息を吹きかけたり触れたりしてその人の穢れを移し、それを川に流してみそぎとするもの。また川社(かわやしろ)は川に斎串(いぐし)を立てて祓いの儀式を行う。
【例句】
草の戸や畳かへたる夏祓
太祗「太祗句選後篇」
夏祓御師の宿札たずねけり
其角「華摘」
夏祓目の行く方や淡路島
嵐雪「渡鳥」
灸のない背中流すや夏はらひ
蕪村「蕪村句集」
夕かぜや夏越しの神子のうす化粧
大江丸「俳懺悔」
形代にさらばさらばとする子かな
一茶「文政八年句集」
天地の力もて結ひ茅の輪かな
長谷川櫂「天球」