蚊(か)三夏
【子季語】
藪蚊、縞蚊、赤家蚊、蚊柱、蚊の唸り、蚊を打つ
【関連季語】
蚊帳、ぼうふら、春の蚊、秋の蚊、蚊遣火
【解説】
夏、人や家畜の血を吸う小さな虫。蠅同様、人に嫌われる。夜分出ることが多いが、藪蚊などは昼も出てる。蚊帳を吊ったり、蚊遣火を焚いたりして、蚊が近づくことを防ぐ。蚊柱は、蚊が交尾のために群れている状態をいう。
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
夏の夜は枕をわたる蚊のこゑのわづかにだにもいこそ寝られぬ 後京極摂政『夫木和歌抄』
『枕草子』清少納言(28段、にくきもの)、狂言『蚊相撲』
【実証的見解】
ハエ目カ科の昆虫の総称である。成虫は、細長い体型で十ミリより小さい。足は長く二枚の羽で飛翔する。雌は産卵のために人や家畜の血を吸って栄養を取るが、雄は、血を吸うことはない。水溜りなどの動かない水に卵を産み、二日ほどで孵化してぼうふらとなる。その後オニボウフラといわれるさなぎになり、卵から二週間ほどで成虫になる。マラリアや日本脳炎などいろいろな病原体を媒介する。
【例句】
わが宿は蚊の小さきを馳走なり
芭蕉「小文庫」
蚊の化やつひにあらはすタ烟
高政「おくれ双六」
蚊や人を夜は食らへども昼見えず
調和「伊勢踊」
こころよやけふの湯あみに蚊が逃げる
来山「元の水」
群かへる蚊のかたまりややまかづら
言水「柏崎」
うき人に蚊の口見せる腕かな
召波「春泥発句集」
蚊のこえのまつはり落つる無明かな
石田波郷「雨覆」
迂闊にも蚊の巣窟にゐるらしく
長谷川櫂「虚空」