若竹(わかたけ) 仲夏
【子季語】
今年竹、竹の若葉、竹の若緑
【解説】
初夏、地上に出た筍は、茶色の皮を脱いで新しい竹となる。ぐんぐん伸びてみずみずしい若葉を広げる。その年に生えたので今年竹ともいう。
【科学的見解】
身近な場所で一般的に見られる竹類は、マダケとモウソウチクである。マダケは七月ごろに、モウソウチクは四月ごろに地下茎から新芽(タケノコ)を出し、一ヶ月程度で親と同じ大きさとなる。その年に生長した若竹は、色合いは美しく、瑞々しい感がある。しかし、急速に生長したためか、材の繊維が成熟しておらず、竹材利用(竹細工等)には向かない。(藤吉正明記)
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
山がつのさかひになびく若竹のわかわかしくて世をや過ぎなん 藤原為家『夫木和歌抄』
【例句】
若竹や竹より出て青き事
北枝「草刈笛」
昼鐘や若竹そよぐ山づたひ
丈草「雪月華」
若竹や烟のいづる庫裏の窓
曲翠「類題発句集」
若竹やふしみの里の雨の色
闌更「半化坊発句集」
わか竹や村百軒の麦の音
召波「春泥発句集」
高きよりこの世へ影し今年竹
長谷川櫂「虚空」