秋の暮(あきのくれ)三秋
【子季語】
秋の夕暮、秋の夕
【関連季語】
暮の秋
【解説】
秋の一日の夕暮れという意味と、秋という季節の終わりという意味がある。古来より二つの意味で使われてきたが、二つの意味が相互に響きあう場合も少なくない。<さびしさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮> 寂蓮『新古今集』、<心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮>西行『新古今集』<見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮>藤原定家『新古今集』などと古くから歌われ、「もののあはれ」「寂しさ」象徴する季語となった。
【来歴】
『山の井』(正保5年、1648年)に所出。
【文学での言及】
秋は、夕暮。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの列ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。 清少納言『枕草子』
【例句】
死にもせぬ旅寝の果よ秋の暮
芭蕉「野ざらし紀行」
此道や行人なしに秋の暮
芭蕉「其便」
門を出れば我も行人秋のくれ
蕪村「蕪村句集」
戸口より人影さしぬ秋の暮
青蘿「青蘿発句集」
日のくれと子供が言ひて秋の暮
高浜虚子 「六百句」
苔寺を出てその辺の秋の暮
高浜虚子 「七百五十句」
家にゐて旅のごとしや秋の暮
長谷川櫂「虚空」