鴫(しぎ)三秋
【子季語】
田鴫、青鴫、磯鴫
【解説】
日本に渡ってくる鴫は非常に多い。大体、七月から十二月にかけて渡ってくる。なかには越冬するものもある。主に田地、沼地の泥湿地に多く、体上面は茶色と黒の交錯、体下面は白い。鳴きながら直線状に飛ぶ。
【科学的見解】
シギ科の野鳥の多くは、北半球北部で繁殖し、長い渡りをして南半球や赤道付近で越冬する種が多い。そのため、その多くは渡りの途中で旅鳥として日本に渡来している。日本で確認されているシギ科の野鳥は、五十八種であり、その中で日本において繁殖が確認されている種は、五種(イソシギ、アカアシシギ、オオジシギ、ヤマシギ、アマミヤマシギ)のみである。中でもイソシギは、本州中部から九州にかけて留鳥として生息しているため、一般的なシギ類と言える。シギ科野鳥の多くは、干潟や水田等の湿地のぬかるみに隠れている小動物を捕食するため、嘴や足が長い種が多い。その典型として挙げられるは、ダイシャクシギやホウロクシギ、チュウシャクシギ等であり、それらは冬鳥や旅鳥として確認されている。(藤吉正明記)
【例句】
刈りあとや早稲かたかたの鴫の声
芭蕉「笈日記」
泥亀の鴫に這ひよる夕かな
其角「五元集」
よる浪や立つとしもなき鴫一つ
太祗「太祗句選後篇」
鴫遠く鍬すすぐ水のうねりかな
蕪村「新五子稿」
鴫突きのしや面になぐる嵐かな
一茶「七番日記」