鴨(かも)三冬
【子季語】
青頚、真鴨、巴鴨、鈴鴨、蓑鴨、蘆鴨、尾長鴨、小鴨、蓑葭、星羽白
あいさ、鴨舟、鴨打、鴨道、鴨鍋
【解説】
どこにでも見られる親しい水禽。主に海と流水に棲むものに大別される。北国より渡り来て、春には帰る。狩猟の対象として真鴨は人気が高い。
【科学的見解】
鴨はカモ科の野鳥で、日本では三十種以上が確認されており、生息環境の違いで淡性カモ類と海ガモ類に分けられている。本州で繁殖するカモ類は、基本的にカルガモとオシドリのみで、その他は北海道もしくは北海道以北の地域で繁殖する。そのため、カモ類のほとんどは冬鳥として日本へ渡来している。食性は雑食性が多く、水中に生育している水草の種子や葉、藻類、または水生昆虫やプランクトン等を採食している。(藤吉正明記)
【例句】
毛衣に包みてぬくし鴨の足
芭蕉「続猿蓑」
海暮れて鴨の声ほのかに白し
芭蕉「野ざらし紀行」
鈴鴨の声ふり渡る月寒し
嵐雪「続の原」
鴨啼くや弓矢を捨てて十余年
去来「いつを昔」
水底を見てきた顔の小鴨かな
丈草「猿蓑」
鈴鴨の虚空に消ゆる日和かな
蒼虬「蒼虬選句集」
鴨啼くや上野は闇に横はる
正岡子規「子規句集」
鴨の中の一つの鴨を見てゐたり
高浜虚子「五百五十句」
鍋にして一羽の鴨でもてなしぬ)
長谷川櫂「初雁」)