鴛鴦(おしどり、をしどり)三冬
【子季語】
匹鳥、銀杏羽、思羽、剣羽、番鴛鴦、離れ鴛鴦、鴛鴦の契、鴛鴦の浮寝、鴛鴦の独寝
【解説】
ガンカモ科の水禽。雄の羽根の造形は華麗で色も鮮やか。靜かに水に浮いている様は九谷焼の置物のごとし。「鴛鴦夫婦」のことばがあるように、雌雄仲が良い。夏に山の渓流、湖などで繁殖、秋、里に現れる。里でも繁殖する。
【科学的見解】
オシドリは、カモ科(旧ガンカモ科)淡水ガモ類の水鳥で、全国的に繁殖し、留鳥もしくは漂鳥として生活している。生活は、淡水ガモ類と似ているが、異なる点としては木にとまることが多く、営巣は木にできた樹洞を利用する。多くの野鳥で見られるように、繁殖期になると雄は鮮やかな色彩となるが、冬の非繁殖期にはほぼ雌と同様の模様となる。このことは、「エクリプス」と呼ばれている。食性は雑食性とされているが、植物食の傾向が強く、草の種子や樹木の果実、特にブナ科植物の堅果であるドングリ等を好んで食す。近縁種としては、同属のナンキンオシが知られているが、日本での観察記録は数例程度とのことである。(藤吉正明記)
【例句】
里過て古江に鴛を見付たり
蕪村「蕪村句集」
鴛や池におとなき樫の雨
蕪村「落日庵句集」
帰り来て夜をねぬ音や池の鴛
太祗「太祗句選」
かざし羽の帆になるをしの浮寝かな
梅室「梅室家集」
横ざまに鴛のながるる早瀬かな
蝶夢「草根発句集」
こがらしや日に日に鴛鴦のうつくしき
士朗「枇杷園句集」
古池のをしに雪降る夕かな
正岡子規「子規句集」
鴛鴦浮くや雌やヽに雄に隠れがち
原石鼎「花影」
鴛鴦に白く氷の張りつめし
長谷川櫂「天球」