寒菊(かんぎく)三冬
【子季語】
冬菊、霜菊、初見草、霜見草、雪見草、秋無草
【解説】
冬になって咲く菊で、花の色は黄、時に白。秋に咲くものと違って花も葉も小さい。近畿地方以西の日当たりのよい山麓に自生する。十二月から一月にかけ、花がない時に咲くので愛される。京都など寒いところでは、葉が紅葉して美しい。
【科学的見解】
寒菊は、キク科キク属の多年草である。日本の在来種としては、島寒菊(シマカンギク)があり、近畿以西から九州の暖地に自生している。シマカンギクは、別名ハマカンギクやアブラギクとも呼ばれている。また、変種も多く、イヨアブラギク、ツルギカンギク、シロバナハマカンギクなどが、西日本の限られた地域で生育している。(藤吉正明記)
【例句】
寒菊の気随に咲くや藪の中
来山「続今宮草」
寒菊や粉糠のかかる臼の端
芭蕉「炭俵」
寒菊や醴(あまざけ)造る窓の前
芭蕉「芭蕉書簡」
泣中に寒菊ひとり耐へたり
嵐雪「玄峰集」
寒菊の隣もありや生大根
許六「有磯海」
寒菊や夕日に向かふ硯彫
桃隣「古太白堂句選」
寒菊や日の照る村の片ほとり
蕪村「落日庵句集」
寒菊や虱をこぼす身のいとま
白雄「白雄句集」
寒菊や水屋の水の薄氷
蓼太「蓼太句集三編」
かんぎくや更に花なきはなの後
暁台「暁台句集」
寒菊やいも屋の裏の吹透し
正岡子規「子規全集」
弱りつつ当りゐる日や冬の菊
日野草城「花氷」