鵙の贄(もずのにえ、もずのにへ)三秋
【子季語】
鵙の早贄、鵙の贄刺、鵙の草茎、鵙の磔刑餌
【解説】
鵙は昆虫や蛙、蛇、鼠などを捕らえると、それをとがった木の枝や有刺鉄線などに刺し蓄えたりする。これを鵙の贄と呼ぶ。
【科学的見解】
モズは、モズ科の野鳥で、本州から九州までの地域では留鳥、北海道では夏鳥、南西諸島では冬鳥として生息している。生息環境は、人里周辺の農耕地や河川、高原の林縁等低木が生育する開けた環境を好む。繁殖期は、二月から七月までで、年に一回もしくは二回繁殖する。食性は肉食性であり、昆虫やミミズ、両生類、爬虫類等の小動物を捕食する。秋から春にかけては、人里周辺の農耕地や河川等に単独ですみ、縄張り主張のための高鳴きを行う。また、秋から冬には、捕らえた獲物を有刺鉄線や尖った小枝等に串刺しにして貯食しておく、早贄(はやにえ)の習性がみられる。近縁の種としては、日本に夏鳥として渡来するアカモズが知られている。アカモズもモズ同様に早贄の習性を持つとのことである。(藤吉正明記)
【例句】
やき芋や鵙の草茎月なき里
言水「金剛砂」
草茎に鵙の心はしられけり
野坡「菊の道」
草茎を失ふ百舌鳥の高音かな
蕪村「新五子稿」
日のさして鵙の贄見の葉裏かな
蘭更「半化坊発句集」
大空のしぐれ匂ふや百舌の贄
渡辺水巴「水巴句集」