松の花(まつのはな) 晩春
【子季語】
松の花粉/十返りの花
【解説】
松は、晩春、新芽の先に赤紫の雌花をつける。雄花は茶色で新芽の下部に密生する。花粉を飛ばし終えた夥しい数の雄花が、松の周りなどに散っているのをよく見かける。雌花は松毬となる。
【科学的見解】
松の仲間は、雄花と雌花に分かれた単性花を形成する。風媒花でもあるため、花弁は形成せず、大量の花粉を飛散させることで受粉の確率を高めている。人里付近の松の仲間は、クロマツとアカマツが一般的であり、海岸付近にはクロマツが、内陸の乾燥地域にはアカマツが生育している。(藤吉正明記)
【例句】
すつと立つ木草の中に松の花
鬼貫「七 車」
まだ山の味覚えねど松の花
憔然「憔然坊句集」
あかつきや弥勒弥勒と松の花
路通「真 蹟」
妻ぐしに真葛たまりや松の花
淡々「五歌僊」
線香の灰やこぼれて松の花
蕪村「香世界」
棟札は大同二年松の花
二柳「紫暁春帖」
松の花南海の紺夕べ濃き
大谷碧雲居「碧雲居句集」
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