晩秋
【子季語】
秋揚げ、秋じまい、土洗ひ、蓆たたき、田仕舞、秋忘
【解説】
その秋の収穫がすべて終了したということ。田植から収穫まで、作業に携わった人々が寄り合いお祝いをする。餅を搗く場合もある。呼び名も方法も地域によって違うが、いずれにしても春からの長い農作業のねぎらいと、感謝の意味が込められている。
【例句】
天と地の間の秋を収めけり
長谷川櫂「初雁」
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厩出し(うまやだし)仲春
【子季語】
まや出し
【解説】
冬のあいだ厩で飼っていた牛馬を、春になって野に放つこと。
【例句】
頂につらなる雪に厩出し
前田普羅「飛騨紬」
梅擬(うめもどき)晩秋
衾(ふすま)三冬
冬萌(ふゆもえ)晩冬
【解説】
冬に木の芽や草の芽が萌え出しているさま。
年の火(としのひ)暮
蘗(ひこばえ)仲春
【子季語】
ひこばゆ
【解説】
春、樹木の切り株や根元から萌え出る若芽のこと。名前は「ひこ生え」に由来する。
【科学的見解】
ひこばえは、萌芽とも呼ばれ、主に広葉樹の樹木で見られる現象である。里などでは、昔から炭や薪を得るために、クヌギやコナラなど広葉樹を主体とした雑木林が管理されてきた。樹木の伐採後、種子や苗を植えるよりも、切り株から発生した萌芽を生かすことで、より樹木が早く成長し、効率的な木材生産を行うことができる。この管理のやり方を、萌芽更新または萌芽再生と呼ぶ。(藤吉正明記)
【例句】
蘗に杣が薪棚荒れにけり
芝不器男「芝不器男句集」
あらぬ木の蘗えにけり捨屋敷
松瀬青々「妻木」
大いなる蘗に日の当りけり
原月舟「国民俳句」
草の市(くさのいち)初秋
【子季語】
草市、盆市、盆の市、手向の市、蓮の葉売、麻殻売、真菰売、灯籠売
【解説】
盆の行事に用いる蓮の葉、真菰筵、茄子、鬼灯、燈籠、土器などを売る市のこと。昔は十二日の夜から翌朝にかけて立った。
【例句】
草市や柳の下の灯籠店
正岡子規「春夏秋冬」
売れ残るもの露けしや草の市
正岡子規「寒山落木」
草市の草の匂や広小路
正岡子規「俳句稿」
草買うて人ちりぢりや露の中
松瀬青々「妻木」
草市のあとかたもなき月夜かな
渡辺水巴「水巴句集」
六道の辻の賑ひ草の市
長谷川櫂「蓬莱」