【子季語】
キャベツ、玉菜
【解説】
ヨーロッパ原産のアブラナ科の一~二年生の葉菜。キャベツのこと。明治になって普及し現在では全国で栽培される。葉は幅広く緑色で無毛。中心部の葉はぎっしりと重なって球状をなす。生食、煮食また漬物など重宝に用いられる野菜。
【科学的見解】
甘藍は、別名としてタマナとも呼ばれるが、標準和名としてはキャベツである。キャベツは、アブラナ科の多年草で、明治以降にヨーロッパより導入された野菜である。本種は、葉が密に丸く結球するところが最大の特徴であるが、開花期には葉がほころび開出し、それまで短かった茎が伸長して、十字架花を先端に複数付ける。(藤吉正明記)
【例句】
親雀キャベツの虫を喰へ飛ぶ
杉田久女「杉田久女句集」
dvx22327
河鵜(かわう、かはう)三夏
【子季語】
海鵜、鵜
【解説】
ペリカン目ウ科の鳥。首が長く全身黒色。繁殖期には頭部に白い羽毛が生ずる。日本では本州と九州で繁殖し、四国では冬に見られる。水辺に棲み、潜水して魚を獲る。なお、長良川の鵜飼に使うのは海鵜。
【科学的見解】
カワウは、ウ科の野鳥で、九州以北で繁殖し、主に留鳥として生息している。本種は魚類を主食にしているため、河口や入り江などの海岸沿いにいる場合が多い。本種は、中型の水鳥で、水かきのある足を巧みに使い潜水を行う。潜水後は、撥水性を高めるために、翼を広げて羽毛を乾かす必要がある。産卵期は長く、冬の十一月から初夏の六月までであり、卵数は三個から四個程である。近縁種としては、ウミウが知られており、本種の背中の羽の色は茶褐色に対して、ウミウは光沢のある緑色となるため、その点で区別できる。(藤吉正明記)
【例句】
首たてて鵜のむれのぼる早瀬かな
浪化「喪の名残」
鵜の嘴に魚とりなほす早瀬かな
白雄「白雄句集」
昼の鵜の現に鳴くか籠のうち
青蘿「青蘿発句集」
あながちに鵜とせりあはぬかもめかな
尚白「猿蓑」
鵜の面に川波かゝる火影哉
闌更「半化坊発句集」
しのゝめや鵜をのがれたる魚浅し
蕪村「蕪村句集」
風吹て篝のくらき鵜川かな
正岡子規「子規句集」
誘蛾灯(ゆうがとう、いうがとう)晩夏
【解説】
田畑や庭園などに設け、夜に点灯して蛾などの昆虫を集め捕殺する装置。殺虫剤の発達により、現在では発生予防用と果樹園害虫防除、夜間営業の店などのほかは、ほとんど使用されなくなった。
夏の川(なつのかわ、なつのかは)三夏
【子季語】
夏川、夏河原
【解説】
夏の河川のことである。梅雨どきの濁流あふれんばかりの川、盛夏の水量乏しい川、山峡の清流、子供たちが水遊びにふける川など、時と場合によってさまざまな情景が見られる。
【例句】
夏河を越すうれしさよ手に草履
蕪村「蕪村句集」
夏川や水の中なる立咄し
正岡子規「子規句集」
夏川や吾れ君を負ふて渡るべし
正岡子規「子規句集」
夏川のあなたに友を訪ふ日哉
正岡子規「子規句集」
夏川や小橋たわわに水を打つ
正岡子規「獺祭句帖抄」
馬に乗つて河童遊ぶや夏の川
村上鬼城「定本鬼城句集」
よべのまゝ夜明けし窓や夏の川
原石鼎「原石鼎全句集」
夏川や一つ瀬やがて二た流れ
原石鼎「原石鼎全句集」
夏の波(なつのなみ)三夏
【子季語】
夏涛、夏怒涛
【解説】
強い日射しの下、次々に打ち寄せては返す大波。ことに夏の波は、力強い生命力を感じさせる。
秋櫻子忌(しゅうおうしき、しうあうしき)晩夏
【子季語】
喜雨亭忌、群青忌、紫陽花忌
【解説】
俳人水原秋櫻子(一八九二~一九八一)の忌日。七月十七日。本名豊。東京神田生まれ。高浜虚子に師事し「ホトトギス」黄金時代を築く。後に「馬酔木」を主宰し虚子と訣別した。
夏の海(なつのうみ)三夏
草蜉蝣(くさかげろう、くさかげろふ)晩夏
母の日(ははのひ)初夏
麦扱(むぎこき)初夏
【子季語】
麦扱機
【解説】
刈り取った麦の穂を落とす作業のこと。かつては、金属または竹製の歯を櫛状に並べた千歯扱きという器具に麦の穂をかけて引っぱった。足踏み式の脱穀機の時代もあったが、近年では全て機械化されている。
【例句】
麦扱や暫く曇る塀の先
非群「類題発句集」