【子季語】
初買
【関連季語】
初商、初市
【解説】
新年に初めて買い物をすること。デパートや商店の初売では福袋を売り出す。正月二日に行われるが、現在は商習慣の変化により、元日に行われることもある。
【例句】
買初や多分に切つて尺の物
河東碧梧桐「続春夏秋冬」
初買や富る事をしつて若夷
宗好「雑巾」
両国の初買やこれ福寿草
文車「明和二年歳旦帖」
命毛の長さよ筆の買ひはじめ
元夢「千題集」
買初に雪の山家の絵本かな
泉鏡花「泉鏡花俳句集」
【子季語】
初買
【関連季語】
初商、初市
【解説】
新年に初めて買い物をすること。デパートや商店の初売では福袋を売り出す。正月二日に行われるが、現在は商習慣の変化により、元日に行われることもある。
【例句】
買初や多分に切つて尺の物
河東碧梧桐「続春夏秋冬」
初買や富る事をしつて若夷
宗好「雑巾」
両国の初買やこれ福寿草
文車「明和二年歳旦帖」
命毛の長さよ筆の買ひはじめ
元夢「千題集」
買初に雪の山家の絵本かな
泉鏡花「泉鏡花俳句集」
【子季語】
初荷馬、飾馬、初荷車、初荷舟、初荷橇、初荷駅
【関連季語】
初商、初市
【解説】
初商いの商品の運搬荷物。正月二日の朝、初荷と書いたのぼりを立てて景気よく送り出される。
【来歴】
『守貞漫稿』(嘉永6年、1853年)に所出。
【例句】
伊丹から酒の初荷や梅の花
鱸江「懸葵」
初荷車蜜柑とらせて村過ぐる
萬頃「懸葵」
竹切つて嵯峨は初荷の牛車
句佛「我は我」
暁の提灯暗き初荷かな
内藤鳴雪「鳴雪俳句集」
おとなしく飾らせてゐぬ初荷馬
村上鬼城「定本鬼城句集」
【子季語】
初市場、市始、初立会、初相場、初糶、大発会
【解説】
新年に初めて立つ市のこと。昔は二日に魚市や野菜の市が立った。現在では魚河岸や青果市場で四日が初市となっている。東京証券取引所の初立会いは四日で大発会という。
【来歴】
『俳諧手勝手』(文化7年、1810年)に所出。
【例句】
はつ市や鶯買うて戻る人
其由「新類題句集」
初市の跡はそのまゝ霞かな
成美「杉柱」
初市や雪に漕ぎ来る若菜船
嵐蘭「猿蓑」
初市や海鼠一籠隅にあり
青木月斗 (同人)
【子季語】
試筆、試毫、吉書、吉書始め、筆始め
【関連季語】
左義長
【解説】
新年に初めて文字や絵を書くこと。古くは元日、今では二日にめでたい詩や句を選んで書初めをする。書いたものが吉書。左義長の火にくべて高く上がると上達するといわれる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【例句】
大津絵の筆の始めは何仏
芭蕉「俳諧勧進牒」
ゆづり葉や口にふくみて筆始め
其角「俳諧勧進牒」
書初は女まじらぬ一間かな
露月「露月句集」
立札や上の一字を筆始
正岡子規「子規句集」
【子季語】
お年玉、礼扇
【解説】
新年の祝儀としての贈り物。室町時代は酒や昆布を贈答し、江戸時代には扇、鼠半紙、明治以降は金銭が用いられる。近年では子供に与える小遣いを指すことが多い。
【来歴】
『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。
【実証的見解】
年玉は、歳神に供えたものを人々が賜わるという意味がある。賜わるものは餅であったり、米であったりした。歳神は、もともとその年の豊作をもたらす神であり、歳神の魂が入った年玉をいただくことで繁栄がもたらされる信じられた。
【例句】
年玉に梅折る小野の翁かな
言水「京日記」
とし玉の蕪菜かろげや黒木うり
蝶夢「草根発句集」
とし玉や杓子数添ふ草の庵
太祗「太祗句選」
年だまやわび寝の庵の枕上
召波「春泥発句集」
とし玉のさいそくに来る孫子かな
一茶「九番日記」
年玉を竝べて置くや枕もと
正岡子規「墨汁一滴」
年玉や何ともしれぬ紙包
正岡子規「獺祭句帖抄」
【子季語】
年始、年の賀、年礼、年の礼、初礼、正月礼、春の礼、門礼、廻礼、 年始廻り、賀正
【解説】
正月三が日に新年の挨拶をするため、親戚、知人、近隣を訪ねて回ること。門先の挨拶だけですますことを門礼という。
【来歴】
『世話盡』(明暦2年、1656年)に所出。
【例句】
へぎの上に春は来にけり門の礼
信徳「歳旦発句集」
うぐひすや遠路ながら礼返し
其角「猿蓑」
礼受けて春めき居るや草の庵
太祗「葎亭画賛集」
御年初の返事をするや二階から
一茶「八番日記」
【子季語】
雑煮祝ふ、雑煮餅、雑煮膳、雑煮椀、羹を祝ふ
【解説】
正月に餅を入れて食べる汁物をいう。一家の無病息災を願い、新年をを祝う。餅の形は地方や家によって異なる。主に関東、東国は切り餅、京阪、西国は丸餅にする。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【実証的見解】
古くは、元日は大晦日の夕方から始まるとされ、大晦日の夕方に神仏に供えた餅を、羹(あつもの)にしたのが雑煮の起源とされる。地方によって仕立て方はそれぞれ異なるが、関東では、焼いた切り餅をすまし汁仕立てにし、関西では丸餅を味噌仕立てにする。
【例句】
脇差を横に廻して雑煮かな
許六「犬註解」
雑煮ぞと引きおこされし旅寝かな
路通「彼此集」
三椀の雑煮かゆるや長者ぶり
蕪村「蕪村句集」
君が世や旅にしあれど笥の雑煮
一茶「寛政句帖」
長病の今年も参る雑煮かな
正岡子規「子規句集」
笹鳴を覗く子と待つ雑煮かな
渡辺水巴「水巴句集」
大阪でひとつ歳とる雑煮かな
長谷川櫂「蓬莱」
【子季語】
屠蘇酒、屠蘇袋、屠蘇の香、屠蘇の酔、屠蘇延命散、屠蘇散
【関連季語】
年酒、御薬を供ず
【解説】
正月に酌む薬酒。酒、みりんに山椒や肉桂、桔梗などの根や皮を浸して作る。朱塗りの三つ重ねの杯を用い、延命長寿を願って、年少者から順に飲む。年賀の客に振舞うのは「年酒」であって、屠蘇とは区別する。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【実証的見解】
屠蘇の語源はいろいろある。「屠蘇」という草庵に住む人が疫病よけに始めたからという説。屠蘇の「蘇」は悪鬼の名であり、それを屠るから「屠蘇」という説。「屠」はほふるであり、「蘇」はよみがえるであるから、邪気を退散させ、魂をよみがえらせることから「屠蘇」の名があるという説。いずれにしても、疫病を退け、不老長寿を願うための薬酒であることに変わりはない。屠蘇はもともと、屠蘇延命散といい、平安時代の嵯峨天皇のころに中国から伝わった薬酒。屠蘇の慣習は、宮中での「御薬を供ず」という三が日の行事から始まって、江戸時代に庶民にも広まった。
【例句】
屠蘇の酒あら玉垂の小亀かな
季吟「玉海集」
元日や花咲春は屠蘇の酒
杉風「杉風句集」
屠蘇の香や枕にうらむ薬紙
支考「獅子物狂」
屠蘇酒や又とそまでの遊びぞめ
千代女「壬子歳旦帖」
ぬれ色やほのぼの明けのとそ袋
一茶「七番日記」
月代にとそぬり付けて出たりけり
一茶「七番日記」
指につく屠蘇も一日匂ひけり
梅室「梅室家集」
小さなる屠蘇の杯一つづつ
村上鬼城「定本鬼城句集」
屠蘇くめや短くなりしいのちの緒
森澄雄「四遠」
【子季語】
御鏡、餅鏡、据り餅、御供、御供餅
【関連季語】
伊勢海老、裏白、具足餅、鏡開
【解説】
正月に飾る丸餅。三方に大小二個の鏡餅を重ね、橙、伊勢海老、裏白、昆布、串柿などで飾る。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【実証的見解】
餅を鏡の形にして、神に供えるものが鏡餅である。三種の神器の一つ八咫鏡(やたのかがみ)に擬したものともいわれる。鏡餅が現在のような形で供えられるようになったのは室町時代以降のことといわれる。武家では男子が、正月に鎧や兜を飾り、その前に餅を供えた。これが具足餅である。女子は、普段使う鏡の前にそなえたとされ、それが鏡餅の由来という説もある。
【例句】
古歌に曰くちとせぞ見ゆるかがみ餅
宗因「宗因発句集」
正月を出して見せうぞ鏡餅
去来「夏の月」
かゞみ餅蜜柑はうまき時分也
許六「旅館日記」
長生に徳あり姥が居(すわ)り餅
園女「菊のちり」
かゞみ餅母在して猶父恋し
暁台「暁台句集」
ふくよかにすわりめでたし鏡餅
村上鬼城「定本鬼城句集」
つぎつぎに子ら家を去り鏡餅
加藤楸邨「まぼろしの鹿」
鏡餅わけても西の遙かかな
飯田龍太「山の影」
天地を一つにまるめ鏡餅
長谷川櫂「初雁」
【子季語】
蓬莱飾、蓬莱山、蓬莱台、蓬莱盆
【関連季語】
喰積、幸木
【解説】
正月の蓬莱飾りのこと。三方の上に海老、熨斗鮑、昆布、穂俵、裏白、橘、栗、柿、橙、米、梅干など積み重ね、松竹梅を立てる。本来は歳神の供え物であったが、やがて年賀の客にふるまわれ、おせち料理(喰積)となった。九州や四国に見られる幸木に近い慣習。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【実証的見解】
蓬莱飾りは、古代中国で東の海上にある仙人が住む不老不死の山、蓬莱島を模したもの。平安時代には酒宴などの装飾に用いられたが、室町時代になると来客の肴として出されるようになった。江戸ではこの習慣がなく、もっぱら、喰積という重詰めで賀客を饗した。
【例句】
蓬莱に聞かばや伊勢の初便
芭蕉「炭俵」
蓬莱にかけてかざるや老の袖
去来「そこの花」
蓬莱の麓にかよふ鼠かな
西鶴「温故集」
蓬莱や升の中から山が出る
来山「今宮草」
ほうらいの山まつりせむ老の春
蕪村「安永四年句稿」
蓬莱に夜が明け込むぞ角田川
一茶「七番日記」