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季語と歳時記

きごさい歳時記

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春着(はるぎ) 新年

季語と歳時記

【子季語】
春衣、春著、正月小袖、春小袖、花小袖、松がさね、初重ね、若草衣、初衣裳
【解説】
女性や子どもが正月に着る晴着をいう。旧暦のころ、正月は春を迎えることであり、正月に着る春の着物が、春着そのものだった。
【来歴】
『滑稽雑談』(正徳3年、1713年)に所出。
【例句】
老いてだに嬉し正月小袖かな
信徳「五の戯言」

明けぼのの春早々に借着かな
一茶「享和句帖」

誰が妻とならむとすらむ春着の子
日野草城「銀」

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獅子舞(ししまい、ししまひ) 新年

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【子季語】
獅子頭
【解説】
正月の門付芸の一つ。家ゝを訪れてめでたい芸を披露し、新しい年の訪れを祝福する。獅子のかぶりものをした神楽の一種であり、一人で獅子頭をかぶって舞う一人立ちと、胴体に二人が入る二人立ちがある。
【実証的見解】
獅子舞は古代に中国から伝来し、十六世紀に、伊勢神宮で疫病を祓う神楽として始まった。その後、伊勢神宮の御師と呼ばれる神官が、獅子頭を携えて各地を回ったのが現在の獅子舞の始とされる。室町時代から江戸時代の初期のころ、江戸大神楽師、伊勢大神楽師と呼ばれる人々が獅子舞を踊りながら各地を回り、悪霊退散、招福を願った。獅子は古代中国で生まれた想像上の動物、悪霊を祓い幸福をもたらす霊獣である。
【例句】
獅子舞や大口明けて梅の花
一茶「七番日記」

この河は倉庫ばかりの獅子すぐる
久米三汀「返り花」

獅子舞にひそと鎖しゐて夕餉かな
富田木歩「定本木歩句集」

くたくたと獅子がへたばる獅子の宿
前田普羅「前田普羅句集」

獅子舞や函谷関の彼方より
長谷川櫂「初雁」

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万歳(まんざい) 新年

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【子季語】
千秋万歳、万歳楽、御万歳、門万歳、三河万歳、加賀万歳、大和万歳、万歳大夫
【関連季語】
才蔵市
【解説】
新年を祝う門付けの一つであり、主役の万歳大夫と脇役の才蔵との二人組で行われる。その家が千年も万年も栄えるようにと賀詞をのべる。才蔵の鼓に合わせて舞ったり歌ったり、滑稽な問答を交わしたりする。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【実証的見解】
万歳は出身地によって、三河万歳、大和万歳、尾張万歳などと地名を冠して呼ばれる。もともとは室町時代の下層民の千秋(せんず)万歳が起源とされる。主役の万歳太夫は、風折烏帽子に紋服姿で手に扇を持つ。脇役の才蔵は大黒頭巾をかむって鼓を打つ。昔、江戸では、「才蔵市」なるものが立ち、万歳太夫が相方の才蔵をその市で見つけたという。
【例句】
やまざとはまんざい遅し梅の花
芭蕉「真蹟懐紙」

万歳や左右にひらいて松の陰
去来「柞原」

万歳にあはれや老の拍子ぬけ
土芳「蓑虫庵集」

万歳の踏みかためてや京の土
蕪村「落日庵句集」

万歳や飯の吹きたつ竈の前
太祇「太祇句選」

万歳や門に居ならぶ鳩雀
一茶「七番日記」

万歳や黒き手を出し足を出し
正岡子規「寒山落木」

万歳も乗りたる春の渡かな
夏目漱石「漱石俳句集」

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藪入(やぶいり) 新年

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【子季語】
家父入、養父入、里下り、宿入、宿下り、六の餅、十六日遊、親見参
【関連季語】
後の薮入
【解説】
江戸時代、正月十六日に奉公人が休みを貰い、親元に帰ることをいう。親元の遠い者は寺社巡り、芝居見物などをした。盂蘭盆明けの七月十六日にもあり、これは「後の薮入」と呼んだ。
【来歴】
『世話盡』(明暦2年、1656年)に所出。
【実証的見解】
本来は先祖を祀るための休みであり帰郷であったが、その意味合いはしだいに薄れ、奉公人の休みとしての意味合いが強くなった。この日は、奉公人は主人からお仕着せの着物や小遣いをもらって送り出された。現在のような休日制度のなかった時代、薮入りは、奉公人たちにとって首を長くして待つ日であった。
【例句】
やぶいりや牛合点して大原まで
其角「五元集」

やぶ入の寝るやひとりの親の側
大祇「大祇」

やぶ入や浪花を出て長柄川
蕪村「夜半楽」

やぶ入の夢や小豆の煮るうち
蕪村「蕪村句集」

藪いりやよそ目ながらの愛宕山
蕪村「蕪村句集」

やぶいりや守袋をわすれ草
蕪村「蕪村句集」

養父入や鉄漿(かね)もらひ來る傘の下
蕪村「蕪村句集」

やぶ入りは中山寺の男かな
蕪村「蕪村句集」

やぶいりのまたいで過ぬ几巾の糸
蕪村「蕪村句集」

薮入や泪先立つ人の親
一茶「七番日記」

薮入の二人落ちあふ渡しかな
正岡子規「子規句集」

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左義長(さぎちょ、さぎちやう) 新年

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【子季語】
三毬杖、とんど、どんど、どんどん焼き、どんど正月、どんど場、さいと焼き、正月小屋、どんどん小屋、さいと小屋、飾りあげ、飾りはやし、吉書揚、みそどんど、爆竹、飾焚
【解説】
小正月に行われる行事。一月十四日の夜または十五日の朝に松飾りや注連飾りを焚きあげる。この火で餅団子を焼いて食べると一年中無病息災であるとされる。書初の書を燃やして高く上がると上達するとも言われている。「どんど焼」の「どんど」は「どんど燃えろ、どんど燃えろ」という囃し言葉からきたとされる。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。 
【実証的見解】
左義長は、平安時代の宮中行儀の吉凶占いがその始まりとされる。大焚火の中心になるのは、三本に組まれた毬杖(ぎちょ)といわれる祝い棒または竹である。これに村人が持ち寄った正月飾りなどを結んで火をつけ、門松や注連飾りによって迎えた歳神を、それらを焼いた火によって送り返すのである。
【例句】 
小雨降るとんども例の火影かな
鬼貫「仏の兄」

左義長に尻あぶりゐるも男気ぞ
言水「遠帆集」

餅焼くをいとま乞のどんどかな
太祗「太祗句選後篇」

どんど焼どんどと雪の降りにけり
一茶「七番日記」

おどろかすどんどの音や夕山辺
青蘿「青蘿発句集」

どちらからも田中の神やかざり焚く
道彦「蔦本集」

お飾りを焚いて真冬に戻りけり
長谷川櫂「初雁」

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粥柱(かゆばしら) 新年

季語と歳時記

【関連季語】kayubasira
小正月、十五日粥
【解説】
正月七日の七草粥や、十五日の小豆粥の中に入れて食べる餅のこと。餅を柱に見立てた。地方によっては粥を煮るときに用いる削り木のことをいうところもある。
【来歴】
『をだまき綱目』(元禄10年、1697年)に所出。
【実証的見解】
小豆粥は、冬至と小正月に炊かれる粥で、疫病や邪気を払う力があるとされる。小正月に炊かれる粥には餅(粥柱)が入るが、旧暦十五日が「望の日」にあたるからともいわれる。
【例句】
したたかに挟み上げたり粥柱
李山「新類題発句集」

粥ばしら円きもあれば角もある
都雀 「題葉集」

牛に乗る老子とこしへ粥柱
長谷川櫂「初雁」

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餅花(もちばな) 新年

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【子季語】
花餅、餅穂、餅手鞠、餅の花、餅木
【関連季語】
小正月、繭玉
【解説】
柳や水木などの枝に紅白の餅をちぎって付けたもの。豊作を祈り小正月に飾られる。
【来歴】
『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。
【実証的見解】
餅花は豊作の予祝行事として行われる。予祝とは、その年の豊作を前もってお祝いすること。豊作のお祝いをしてしまったのだから、本当に豊作にしてもらわないと困るということ。養蚕の盛んな地域では、餅花ではなく繭玉を飾って、繭の豊かな収穫を祈った。
【例句】
餅花や柳はみどりはなの春
西鶴「桜川」

餅花や昔ながらの箱障子
抱一「屠龍之枝」

餅花やもつれしままに静まれる
松本たかし「松本たかし句集」

餅花の小判動かず国の春
正岡子規「子規句集」

餅花や今戸の猫にささげばや
芥川龍之介「澄江堂句集」

しだれつつ末の末まで餅の花
長谷川櫂「富士」

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松納(まつおさめ、まつをさめ) 新年

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【子季語】
松取る、門松取る、松送り、松引、松上り、松倒し、松下し、松直し、お松払ひ
【関連季語】
門松
【解説】
正月の門松、松飾りをとりはらうこと。土地によって七日のところもあれば十四日のところもある。元旦から松納めまでを松の内、松納めの後を松過ぎという。
【例句】
松取りて二日になりしやなぎかな
大江丸「はいかい袋」

梅柳松は納めて束ねけり
観魚「続春夏秋冬」

松取りて春まだ浅き大路かな
綺石「新類題発句集」

月白うして鳰啼くや松納
渡辺水巴「水巴句集」

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若菜摘(わかなつみ) 新年

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【子季語】
若菜摘む、若菜狩、若菜迎、初若菜、若菜舟、若菜籠
【関連季語】
子の日の遊び、七種
【解説】
一月七日の七種の菜を摘むこと。古くから正月はじめての子の日に若菜を摘む習慣があったが、後に、七種に合わせて一月六日の行事になった。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【文学での言及】
明日よりは春菜採まむと標めし野に昨日も今日も雪降りつつ 山部赤人『万葉集』
国栖等が春菜採むらむ司馬の野のしましま君を思ふこのごろ 作者不詳『万葉集』
あづさゆみおして春雨今日降りぬ明日さへ降らば若菜摘みてむ よみ人しらず『古今集』
君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ 光孝天皇『古今集』
春日野の若菜摘みにや白妙の袖ふりはへて人のゆくらむ 紀貫之『古今集』
【例句】
畠より頭巾よぶなり若菜つみ 
其角「鳥の道」

ととははやす女は声若しなつみ歌
嵐雪「虚栗」

山彦はよその事なりわかな摘
千代女「千代尼句集」

若菜つみつみはる野にいでにけり
大江丸「はいかい袋」

若菜つみ野になれそむる袂かな
樗良「樗良発句集」

若菜舟一ふしあれや歌之助  
暁台「暁台句集」

茜うら帯にはさんで若菜摘 
一茶「亨和句帖」

堀川や顔見しりたるわかな摘
大祇「句稿」

美しの湖上の虹や若菜摘む
鈴木花蓑「花蓑句集」

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七種(ななくさ) 新年

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【子季語】
七草、七種粥、齊粥、若菜粥、七日粥、若菜の日、宵齊、二齊、若菜の夜、叩き菜、七種貰、七種もらい、七種売
【関連季語】
若菜摘
【解説】
一月七日の人日の節句。この日、七草を羹にしたり、粥や雑炊に炊き込んで食べると、一年の邪気を祓うとされる。春の七草は芹、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、繁縷(はこべら)、仏の座、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)をいう。
【来歴】『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
春日口野のけふ七草のこれならで君をとふ日は何時ぞともなし 赤染衛門『家集』
君がため奈良のあしたの七くさに猶つみそへむよろづ代の春 権僧正公朝『夫木抄』
けふぞかし齊はこべら芹つみてはや七種のおものまゐらむ 慈鎮和尚『拾玉集』
七種の数にはあらねど春の野にゑぐの若葉もつみはのこさじ 藤原信俗実『新撰六帖』
芹齊五形はこべら仏の座菘すずしろこれぞ七種 『年中故事要言』
【実証的見解】
古代中国では、人日の節句(一月七日)に七種類の穀物を羹にして食べ無病を祈る習慣があった。日本でも最初は七種粥といえば、七種の穀物だったが、その後、穀物は春先の七種類の草に変わった。七種の菜は、前の晩に俎に乗せ「七草なずな唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に」などと囃しながら叩き、当日の朝に粥に入れる。
【例句】
七草や明けぬに聟の枕もと
其角「五元集」

七草や袴の紐の片むすび
蕪村「蕪村句集」

七草や兄弟の子の起きそろひ
太祇「太祇句選後篇」

七草をうち出しけり母屋の灯
裸馬「昭和一萬句」

きぬぎぬや齊に叩き起こされつ
内藤鳴雪「鳴雪句集」

天暗く七種粥の煮ゆるなり
前田普羅「普羅句集」

香に籠る齊の粥や持仏堂
松瀬青々「妻木」

君が代の齊をはやす拍子かな
正岡子規「子規全集」

とけそめし七草粥の薺かな
星野立子「立子句集」

母許や春七草の籠下げて
星野立子「句日記Ⅰ」

萕粥仮の世の雪舞ひそめし
飯田龍太「今昔」

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