『宮本常一 歳時習俗事典』
民俗学者、宮本常一の『歳時習俗事典』(八坂書房、2800円+税)が出版された。農耕を基本とした季語項目の解説をまとめたもので、その数は約300項目に及ぶ。念入りな取材に加えて、古典からの引用も多く、記述には説得力がある。本書の「雑煮」の項を見てみよう。
今日では、元日の若水汲みや、ぞうにを祝うことが大事な行事のように思われていますが、じつは、大晦日の夜の神迎えや、神まつりのつつしみぶかい行事の方が大切なので、神を迎える行事は、一般に静かなものでしたから、しだいに忘れられてきて、元日の朝の方がほんとうのまつりのように思えてきたのです。しかし、正月が神迎えののちのまつりであったことは、ぞうにということばでもわかります。ぞうにはいろいろなものをまぜて煮たという意味で、神さまにそなえたいろいろのおさがりを煮たものだったのです。(以下略)(『歳時習俗事典』)
もともと、雑煮は大晦日の残りもので作ったというのである。他にも、「夜食」は農家の藁打ちなどの「夜業」にかかせないものであった、など、こうした興味深い解説は本書の随所に見られる。季語、歳時記を学ぶものにとって必携の一書であろう。(北側松太=季語歳理事)
