第17回恋の俳句大賞(2022年前期)は三玉一郎さん
【大賞】
花林檎遠くまで来し二人かな 三玉一郎
「遠く」とは距離の遠さだけでなく、時間であったり、精神の成熟をも言い表している。それでいて「花林檎」は今この瞬間も初々しい。(村松二本)
☆趙栄順 選
【特選】
口笛で答える君へ風光る 伊達紫檀
ハイキングだろうか。彼を呼ぶと口笛で応える。若々しい恋の句。
スイートピー抱くように抱くきみのこと 澤田紫
柔らかく大切なものはそっと抱く。スイートピーの花束のように。
あなたへとフランス窓を開けて初夏 十音
両開きのフランス窓を開ける。初夏の明るい陽光とあなたの心を受け止める。
ギヤマンの氷カランと恋終わる 戸村友美
恋の終わりは氷がカランと鳴るように。虚しさと寂しさ、そして諦め。
春風や吾をさらひてくれまいか 鹿沼湖
河野裕子は「がさりと落ち葉抱くように」さらって欲しいと歌った。 この句、さらうのは春風。
【入選】
ハンモック君を丸ごと捕まへん 武田百合
還暦の妻投げキッス山笑う 北薗敬
ケチャップで描いたハート聖五月 野井さくら
秋桜の揺れるくちづけ突然に 川合一美
花林檎遠くまで来し二人かな 三玉一郎
☆長谷川櫂 選
【特選】
目の前のあなたが遠き浴衣かな 三玉一郎
そばにいるのに遠い。
だからこそもっと近くにいたい。
恋のやるせない思いを詠む。
【入選】
スマホに君出ぬ日あてどなき草矢 山下守
恋を知り孤独覚えて夏終わる 矢作輝
あのひとは来ない金魚はぶあいそう げばげば
ハンモック君を丸ごと捕まへん 武田百合
どこに行く?どこへでも二個のヘルメット 小池ひろみ
君のことまだ許せずに夏終わる 五十嵐裕治
夏シヤツの濡れて意外な筋肉質 田中目八
ケアマネに焦がれる母や更衣 辻雅宏
逢へぬ日の祭の中を通り抜く 山田蹴人
切なさや叶わぬ恋の蕾たち 千葉文智
夕立や君の心に掛ける傘 高井はなみ
恋といふ熱帯夜のど真ん中かな 高井はなみ
君去ったあの夏のオレ殴りたい 高津佳子
絶景や君に見とれる夏期講座 野井さくら
☆村松二本 選
【特選】
春愁で片づけられる恋ならば 澤田紫
下五を「恋ならば」と言い留める呼吸が、どこか王朝の恋の歌と通い合う。
花林檎遠くまで来し二人かな 三玉一郎
【入選】
夭折の君の思ひ出みな涼し 相川正敏
夏シヤツの濡れて意外な筋肉質 田中目八
告白もせで桜蕊降る中を 永井和子
落花浴びたき耳朶の熱さかな 山田蹴人
新緑やあなたと眠る墓は此処 城内幸江
君がいたあのガラス玉のような夏 森田直樹