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第15回恋の俳句大賞(2021年前期)該当作なし

きごさいBASE 投稿日:2021年8月10日 作成者: dvx223272021年8月15日

恋の俳句大賞は選者の特選句から選びます。今回は残念ながら該当作がありませんでした。

☆趙栄順 選

感想
 今回も様々な恋の思い出や経験を楽しく読ませていただきました。ただ、経験や思い出をそのままなぞっても,俳句にはなりません。あなたの想像力で言葉を飛躍させてください。

【特選】
初蝶やふわりと逃げる君を追い   森教安
 追いかければ逃げる恋のもどかしさ。初蝶の陰影が美しい。
蝉時雨君と出会って止みにけり   八ツ田慧
 あなたといれば時が止まる。音が止む。あまりにストレートな恋の実感。
藍浴衣今宵男をぱんと撃つ     石浜西夏
 男子は女子の浴衣姿に弱い。今宵藍浴衣で、彼の心を射止めるつもり。現代的で痛快。
【入選】
恋しくて返す踵や寒の月      清波
しゃぼん玉君より君を知っている  中原壱朋
春の恋 遮断機下りて 遠ざかる  川島英明
守り抜く恋の秘密や生身魂     森凜柚
コロッケをあなたのために夕薄暑  城内幸江

☆長谷川櫂 選
【特選】
まだ居たい 線香花火 落ちるなよ 石王大地
虹二重ふたりの君がゐるやうな   青沼尾燈子
君の手や夏の限りをつないだ手   幸福来々
【入選】
イヤホンの片方もらふ砂日傘    山田蹴人
後ろから不意の目隠し夕涼み    彩香
向こうからカップルの君夏祭    白井百合子
さよならのあとの香水の一瞬    山田蹴人
【選評】
「恋とはこういうもの」という先入観で作った俗悪な句が多かった。そこが低迷の一因かと思う。

☆村松二本 選
【特選】
うつくしい嘘に誘はれ春の月    辻雅宏
 嘘と分かっていながら始まる恋もある。
星に寝て恋の夢見る海月かな    川辺酸模
 ここには宇宙の摂理の一端が切り取られている。悠久なる一句。
くちづけのように花火の火をもらう 八田昌代
 実際は火をもらうだけなのに、それを「くちづけのよう」と思ってしまうのが恋。
【入選】
未練絶つ青磁の皿に水羊羹     神久美子
あの人に少年の顔麦畑       小島寿々
晩夏光恋を埋めし砂の城      岩橋春海
シスターに駆け落ちの過去星月夜  森としたか
春障子大人の恋のはじまりぬ    清波
夏の月君の寝息の正しくて     坂本清美
風鈴が鳴ってこの世に情事あり   野原めぐみ
守り抜く恋の秘密や生身魂     森凜柚
コロッケをあなたのために夕薄暑  城内幸江

9/5(日)ズームできごさい+ 羊羹の不思議

きごさいBASE 投稿日:2021年7月19日 作成者: dvx223272025年9月28日

さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」。
今回の講師は、きごさい+ではおなじみの虎屋文庫の中山圭子さん。
前回までは虎屋さんのご協力でお菓子付きの講座でしたが、今回はオンライン句会のため残念ながらお菓子は配れません。講師の中山さんから「全国各地にさまざまな羊羹がありますので、ぜひこの機会に傍らに羊羹とお茶をご用意いただき、味わいながら、ご参加ださい。」とコメントをいただいております。

今回はコロナ禍の状況を踏まえ、Zoomを使ったオンライン講演となります。
Zoomは、パソコン、スマートフォン、タブレットを使用されていれば、比較的簡単に視聴できます。ただし事前に参加申し込みが必要です。詳細は下記の<申込み案内>をご覧ください。
講演の後、句会もあります。(選者:中山圭子、長谷川櫂)

演 題 :  羊羹の不思議

講 師 :  中山 圭子(なかやま・けいこ)

画像提供:株式会社虎屋

プロフィール:
東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。四季折々の和菓子のデザインの面白さにひかれて、卒論に「和菓子の意匠」を選ぶ。
現在、和菓子製造販売の株式会社虎屋の資料室、虎屋文庫の主席研究員。
著作に「事典 和菓子の世界 増補改訂版」(岩波書店)、「江戸時代の和菓子デザイン」(ポプラ社)、「和菓子のほん」(福音館書店)など。

講師のひと言
中国の羊の羹(あつもの)が、日本で甘くておいしい羊羹に大変身。謎に満ちた羊羹の歴史やエピソードをお楽しみいただければと思います。

日 時: 2021年9月5日(日)13:30〜16:00(13:15~ Zoomに入場開始)
13:30~14:45 講演
14:50~15:20 句会(選句発表)
15:20~16:00 長谷川櫂(きごさい代表)との対談、質疑応答

5月 きごさい+(講座と句会)報告

きごさいBASE 投稿日:2021年6月1日 作成者: dvx223272025年9月25日

5月29日(土)第22回きごさい+がズームで開催されました。
講師は、東京に唯一残る手縫いの着物仕立て工房「尾張屋」の四代目、森岡正博先生。
美しい画像を見ながら、着物の歴史と時代ごとの女性の役割について、興味深いご講演をいただきました。

古の風に舞う着物  森岡 正博

「きもの」とは「きるもの」の事で江戸時代までは「呉服」、「唐衣(からぎぬ)」、「小袖」、「厚板」等と言われてきました。
神代の頃から女性は崇高な姿で現われます。和服を着た女性の姿は、いつの時代でも特有な雰囲気であたりを魅了し、遠い昔からの思いが伝わります。
この講座では神話の時代から江戸時代まで着物の変遷をたどっていきます。そしてこの変遷には「巫女」と「遊女」の存在とその役割が大きく関わっていたことをお話したいと思います。

◆ 神話の風:女性が国を統治
着物の特徴:貫頭衣、二部式(隋形式)
巫女(神に仕える女性)が国を統治
神話の天照大御神は太陽神の性格と巫女の性格を併せ持つ。天宇受賣命 は神楽を舞う・祈祷をする巫女で卑弥呼も巫女。
応神天皇(父:仲哀天皇、母: 神功皇后)は韓国の王に依頼し、呉の国から機織り姫・絹縫い姫・反物を迎え入れ、国益の礎を作った。従って「呉服」は「呉から来た布・服」の意味。
今でも宮中で欠かさず毎年、繭から糸を取り織った反物を伊勢神宮に奉納する儀式(神嘗祭(かんなめさい) 神御衣祭(かんみそさい))が執り行われている。

◆ 皇族の風:日本文化に女性が貢献
着物の特徴:十二単衣、衣冠束帯
巫女は神に仕える女性
推古天皇は聖徳太子と仏教を軸とした統治を行う。
自然災害(富士山の大噴火 、陸奥で貞観大地震による津波被害)や疫病が流行し災厄を祓う祇園祭(869年)が始まる。
〇遣唐使の廃止、独自の日本文化「国風文化」が生まれる。
草木染は染める色の種類が限られる。ご婦人等は異なる色布を数枚組み合わせて品位・季節・自然界等を表わした(重ね色)。

〇白地小葵鳳凰模様表衣(うわぎ)は 現存する最古の衣装(神服)。第77代後白河法皇が第14代天皇・仲哀天皇の皇后神功(じんぐう)皇后(応神天皇の母)に奉納した宮廷装束(非常に手の込んだ二部織物)

◆ 公家の風:混乱期を支えてきた女性
着物の特徴:小袖(対丈)、直垂(ひたたれ)
巫女は、鎌倉時代に必要な4要素(占い、神楽、寄絃(よつら)口寄(くちよせ))を担い、遊女の側面をもつ巫女(旅をしながら禊(みそぎ)や祓い(はらい)をおこなう)もあった。

〇小袖の原型は十二単の下着
朝廷から東国支配権の公認を得た幕府は宮廷装束である下着(肌着)を表着(豪華な糸や紋様・金銀箔等で埋め尽くした小袖)にして権力を示した。

〇応仁の乱以降、小袖の全盛期

◆武家の風: 人気の的の女性
着物の特徴:小袖(身頃全体が次第に大胆な模様になり袖の口や幅も広くなる)、唐衣、打掛、裃
巫女は神楽の奉納。かぶきおどりなど歌舞で人気を集めた出雲阿国(いずものおくに)も遊女の側面を持つ巫女だった。
遊郭が成立し、遊女、太夫が出現した。

〇婦女有楽図屏風(松浦屏風)1610年 画像は右隻
屏風は遊女のみの風俗画で、着物、髪型などで遊女の序列がわかる。最高位の太夫の着物は現在では再現できないほど手の込んだ織物。豪華で貴重な衣装を着こなす太夫は憧れの的だった。中央右の遊女の首には何かを消した跡がある。キリシタン禁教令が出る前には描かれていたロザリオが弾圧の時期に消されたらしい。
この時期を境に遊女の姿形が極端に変化。その後舞妓姿(髪型等)へ変化してゆく。

〇遊女勝山の人気
江戸の神田にあった数軒の湯女風呂は美しい湯女を抱えて有名になる。中でも「堀丹後守の屋敷前の風呂屋」と言うことで「丹前風呂」と呼ばれた。そこに通う奴(やっこ)や男伊達の姿や歩く様子を歌舞伎で取り上げられた。
「桔梗風呂」にいた吉野という湯女は小唄の流派の元祖となった。
「紀伊国屋風呂」の勝山という湯女は旗本奴に人気がありまた独自に考案した髪型は武家の奥方にも好まれ結われるようになった、後に吉原からスカウトされ遊女となる。また冬に羽織る綿入りの着物「丹前」は、彼女が考案したもの。その姿を旗本奴や客がそれを真似て多くの人々が暖をとるために着用し今でも愛用されている品。大正時代から祇園祭の際に結う髪型(勝山)となる。

◆ 維新の風:威厳ある女性
着物の特徴:小袖(長い身丈、身八ツ口と振りが開く)、掻取(かいどり)、熨斗目、長袴、江戸褄
巫女は神楽の奉納など。
遊女は、太夫、花魁(おいらん)から花柳界、花街へ。着物文化や芸能は現在の舞妓・芸妓へ受け継がれる。1930年頃まで98市に花街が存在していた。

〇髪型の流行
元禄島田は(江戸時代前期に遊女から町人妙齢へ)、勝山髷は(江戸時代前期に遊女から武家妙齢へ)、丸髷は(江戸時代後期に武家既婚から町人既婚者へ)と広がる。
舞妓の区別は髪型が一番分かり易くまた明治の初期まで日常のご婦人方の髪型。

〇花魁(おいらん)・高尾
高尾(通称:もみじ)は、三浦屋に伝わる吉原で11代も続いた最も有名な遊女の源氏名。
2代目の仙台高尾は仙台藩主・伊達 綱宗(だて つなむね)が高尾を見初め身請けした。代金は、高尾の身の回りの衣服を含めた体重と同じ重さの小判(約5億円)だった。大金を費やしたにも関わらず意に従わなかったために、隅田川の三つ又あたりの船中で惨殺された。

〇江戸時代の粋
江戸の町民や大名が遊女や花魁と「馴染み」に成るまでの期間は「粋」が絶対必要条件。立派な大名であっても「野暮」な事をすると、翌日にはその評判で吉原中の「笑い者」になった。

〇幕府の贅沢禁止令
幕府は財政難から度々町民に贅沢禁止を発令し、金銀糸を用いた絹織物や反物の長さや幅を厳しく規制した。しかし帯の規制は無かったので、遊女や花魁達は初期幅5cm程の帯を30cm~40cmも広げ、絢爛豪華な姿で花魁道中をして見物客の目を楽しませた。
帯幅を広げたため袖付が押し上げられ、身八ツ口と振りが開いた。

やがてこの活気も時代と共に消え去り、着物の形は元禄時代以降からほとんど変化する事無く今日に至っている。(了)


句会報告   選者=長谷川櫂、森岡正博
◆ 長谷川櫂 選
【特選】
綺羅まとふ婆沙羅女らみな涼し   西川遊歩
婆さまの浴衣のおむつ天瓜粉    飛岡光枝
身を入れて水輪広がる薄衣     飛岡光枝
端切れでも母の匂ひや汗拭     石塚直子
鯵揚げる音響きけり更衣      北側松太
【入選】
ひと揺れに牡丹くづるる真昼かな  上田雅子
そぉと引く母の単衣やしつけ糸   小泉雅恵
平らかに畳んで仕舞ふ白絣     澤田美那子
家庭科で初めて縫ひし浴衣かな   木下洋子
芭蕉布をまとへば聞こゆ波の音   斉藤真知子
甚平を着てキューピーのやうな奴  高田正子
藍ゆかた手職ひとつを生きてきし  趙栄順
子の丈に仕立直して更衣      澤田美那子
白たへの襷清しく新茶くむ     飛岡光枝
きりきりと母の力の粽かな     上田雅子
二階から見ゆる川舟更衣      北側松太

◆ 森岡正博 選
【特選】
透かし柄さりげなく絽の夏羽織   石川桃瑪
婚の荷の一つに喪服桐の花     中丸佳音
つばめ飛ぶシャッターに閉店のビラ 金澤道子
割りしのぶからくれなゐの藤さげて 北側松太
蒸し上げる湯気家中に柏餅     吉安友子
【入選】
ひやひやと馬蛭泳ぐ水田かな    川辺酸模
なつかしやすり切れし祖母の羅   小泉雅恵
白玉や京の町屋を抜衣紋      鈴木伊豆山
あぢさゐに雨上がりたる日差しあり 曽根崇
明けきらぬ夏をちらつとまた読書  宮本みさ子
玉の汗走る呼吸の二進数      遠藤みや子
旅鞄から巴里祭の紙吹雪      高田正子
浴衣着て今宵眩しき妻の顔     川辺酸模
羅や爪の先まで羅なり       三玉一郎
くけ台は母のお下がり藍浴衣    米山瑠衣
白日傘こころゆつくりひらきけり  趙栄順
若葉雨祭儀を終へし巫女の裾    石川桃瑪
たてよこに風切り入れて浴衣かな  長谷川櫂
お太鼓をぽんと叩くや七変化    米山瑠衣
胸高にきゅきゅっと締めて藍浴衣  鈴木伊豆山
芭蕉布や三線鳴れば踊り出す    趙栄順
ペア浴衣一番乗りのクルーズ船   田中益美
待合せ君に見せたく藍浴衣     木下洋子

韓国、仁荷大学に植樹した山桜の写真が届きました。

きごさいBASE 投稿日:2021年5月31日 作成者: dvx223272021年6月18日

季語と歳時記の会(きごさい)の仕事の一つに「山桜100万本植樹計画」があります。

第1回目は2008年5月、新潟県加茂市の雙璧寺に120本を植樹しました。二回目は翌年2009年10月、韓国仁川市にある仁荷(インハ)大学校キャンパスに3本を植樹しました。

仁荷大学の王淑英先生から山桜の写真(2021年4月9日撮影)が送られてきました。三本とも大きく育っています。王先生からのメールには「今年はとくにきれいに咲きました」とありました。

写真はクリックすると大きくなります。

きごさい第13号 特集 新しい加藤楸邨

きごさいBASE 投稿日:2021年3月27日 作成者: dvx223272025年9月25日

 購読を希望される方は、右サイドのお問い合せからお申し込みください。一冊1500円(送料込み)になります。きごさいの正会員には4月10日までにはお届けいたします。

楸邨のたどりついた表現–村松二本
死後まで推敲した楸邨–藤 英樹
楸邨二百句–藤原智子
対談 楸邨/大岡信① 原点の旅-隠岐–構成・解説 西川遊歩

連載 末期的大衆社会をどう乗り越えるか②
末期的分極化社会と俳句–長谷川公一

HAIKU+
私たちの「俳句」観を探る–青木亮人

きごさい十
キッスとハグと–小貫大輔

植物季語の科学的見解 六–藤吉正明
南相馬に山桜植樹–宮本みさ子

第10回「きごさい全国小中学生俳句大会」講評会開催

きごさいBASE 投稿日:2021年3月14日 作成者: dvx223272025年9月28日

第10回「きごさい全国小中学生俳句大会」は、例年、リアルで行われる表彰式を、2021年3月13日(土)の午後2時から、リモート(ズーム)による講評会として開催をした。
小山正見大会実行委員長から、「参加者の数が史上最高であった」ことなどの報告の後、開会が宣言された。きごさいの長谷川櫂代表の進行で、選者の小山正見日本学校俳句研究会代表、俳人の高田正子さん、長谷川代表の順で、自ら選んだ特選句についての評価や感想が次々述べられていった。
今年の「大賞」句  
こおろぎは風に ♪ をつけている  田中保希 江東区立東陽中学校1年
長谷川代表が「どのようにこの句ができたのか? ♪と書いたところが素晴らしいが、最初から♪を入れようと考えたのか?」と田中君に質問すると、「僕の誕生日が秋なので、こおろぎのことを思い出しながら、句を作りました。音符は最初、漢字を書いたが、♪の方がいいかなと思って変えました」と喜びにあふれた表情で語った。
引き続き、日本学校俳句研究会の山本新先生と、きごさいを代表して飛岡光枝さんの講評が行われた。入室している入賞者の句はすべて取り上げられて、作者に句を作った気持ちなどを質問。・手袋をなくした右手ポケットに(三田村和音 小六)、・うろこ雲思い出せないあの漢字(岩淵凌我 小六)、・弟に光りを分けた花火かな(金子優希 小六)、・さようなら義務教育の暑い夏(田中菜々美)、・秋燕忌母の使っていた辞典(前薗輝 中1)・・・など複数の選者が選んだ句と来場している作者の句が、画面に映し出された。

俳人の高田正子さんは「コロナ禍というがまんの日々ではあるが、俳句は祈りでもあり、投句された句のレベルは前年と比べ充実していると感じた」と話された。小山正見、山本新両先生も「コロナの状況の中で、想像力を羽ばたかせた作品が多く、活性化を感じた」。一方、長谷川櫂代表は「レベルアップの半面、大人の真似らしき句も散見され、問題点として考えていきたい」と総括した。
会場に、鹿児島、岐阜などの俳句教育に熱心な先生が参加されていて、各地の先生方のコメントもたいへん新鮮であった。10年間、俳句大会を続けて来て、その間、『こども歳時記』の発刊などの収穫を得て来たが、次の10年は、さらに教育現場に近いところから「こども俳句」について一家言をもつ先生方の登場と活躍を期待している。
(記録:西川遊歩=きごさい副代表)

第10回きごさい全国小中学生俳句大会

きごさいBASE 投稿日:2021年3月7日 作成者: dvx223272025年9月28日


【大賞】
こおろぎは風に♪をつけている 江東区立東陽中学校 一年 田中保希

小山 正見  選
【特選】
夜回りの声近づいてまた離れ お茶の水女子大付属中学校 中3 菊地奏
海開き波がわたしに会いにくる 福島県南相馬市立原町第三小学校 小5 藤原優芽
ぶらんこに乗った私はもう鳥だ 名古屋市立山田中学校 中3 角田優宙
【入選】
秋燕忌母の使っていた辞典 江東区立東陽中学校 中1 前薗 輝
夏期講習四百人のペンの音 横浜市立岩井原中学校 中3 古川希実
うろこ雲思い出せないあの漢字 江東区立第二大島小学校 小6 岩渕凌我
天高しきれいさっぱり行事無し 大阪星光学院中学校 中1 松澤空弘
ふくろうの黒曜石に似た瞳 葛飾区立亀青小学校 小6 寺門美莉弥
凩の通り道だけ冬になる 江東区立枝川小学校 小4 山木茉空
折り鶴を集めて千羽終戦日 江東区立第二辰巳小学校 小5 式和義
秋晴れに深呼吸する月曜日 江東区立第二辰巳小学校 小5 武藤翠優
ピーマンははっぱにまけないみどり色 江東区立平久小学校 小2 浅野遥
友達と歩幅そろえる秋日和 江東区立豊洲北小学校 小6 中川遥陽
【佳作】
ちょっとだけ授業中断窓の虹 東京都江東区立深川第七中学校 中1 今井井結
じゃんけんで夏のたのしみ決めていく 甲府市立南西中学校 中3 小池真莉香
七夕のおねがいごとはローマ字で 土佐市立高岡第一小学校 小3 時久陽依
クワガタを猫と一緒にのぞきこむ 柳井市立柳井西中学校 中3 金井つぐみ
夏休みやるぞやるぞと最終日 お茶の水女子大付属中学校 中3 杉崎智世
ブレザーを脱いだり着たり冬隣り 狛江市立狛江第一中学校 中1 今屋友希
朴葉寿司離れて暮らす祖母の味 岐阜県加茂郡川辺町立川辺中学校 中1 新藤大知
きまんないようふくえらび七五三 江戸川区立北小岩小学校 小2 松本晃太
秋の日の走りはばとび風に乗る 江東区立越中島小学校 小4 國分まどか
日本がなみだをぬぐう終戦日 江東区立第一亀戸小学校 小4 沈婷軒
ほりましたぼくのうでよりほそいいも 高岡市立伏木小学校 小1 渡辺崇右
シャボン玉どこまでいけるか運だめし 千葉県我孫子市立新木小学校 小6 井上楽々
画用紙をはみ出すほどのいわし雲 中央区立月島第一小学校 小4 中西穂乃佳
春がきてやすみじかんはおにごっこ 土佐市立高岡第一小学校 小3 中平澪
ひまわりで気がつく母の誕生日 豊田市立逢妻中学校 中3 亀田遥名

高田 正子  選
【特選】
弟に光りを分けた花火かな 江東区立八名川小学校 小5 金子優希
学校に行けばいくほどさくらさく 千葉県我孫子市立新木小学校 小4 福井瑠菜
ひまわりが太陽の道作ってる 日野市立南平小学校 小6 小木曽沙彩
【入選】
あまがえるはねておどってぼくもとぶ 大田区立矢口小学校 小5 伊藤竜輝
皮のままがつんとかじるりんごかな 品川区立後地小学校 小4 畑中健成
坂道を登った人だけ秋の空 私立麗澤中学校 中3 奥村芽生
夏休み夕立のようにすぎていく 新宿区立新宿西戸山中学校 中1 木村旬
教室のわらい声聞く目高かな 江東区立越中島小学校 小4 高橋由良
どうしても雲に乗りたいカブトムシ 江東区立八名川小学校 小6 丸山璃緒
暗やみがうなり出す五時寒い冬 高岡市立伏木小学校 小4 川原優梨花
木にばけるつくつく法師どこだろう 糸島市立前原中学校 中3 原野風人
初ゆめはクラスみんなの笑う顔 千葉県我孫子市立新木小学校 小4 薬師寺桜冬
朝起きて痛く聞こえる蝉の声 柳井市立柳井西中学校 中2 川田泰司
【佳作】
秋燕忌母の使っていた辞典 江東区立東陽中学校 中1 前薗輝
夏期講習四百人のペンの音 横浜市立岩井原中学校 中3 古川希実
こおろぎは風に♪をつけている 江東区立東陽中学校 中1 田中保希
手袋をなくした右手ポケットに 江東区立第二亀戸小学校 小6 三田村和音
木枯らしと同じ音するリコーダー 川崎市立住吉小学校 小6 村田康真
姉の背が遠くなってく盆踊り 横浜市立岩井原中学校 中3 平山結衣
ビー玉に閉じ込められた夏の色 山手学院中学校 中3 金子結希
すきとおる素足見つけた夏の川 横浜市立岩井原中学校 中3 三宅優美
ゆげ上ぼるおこりんぼうのおでんなべ 江東区立第二辰巳小学校 小4 渡辺那由
卒業式最後のチャイム鳴りひびく 江東区立南陽小学校 小6 朝比奈知美
地面けりまっすぐ走る秋日和 江東区立豊洲北小学校 小6 横治ちよみ
目に入る汗もそのまま球を追う 高岡市立伏木小学校 小6 中山恵太
一生のこの瞬間の秋夕焼 八王子市立由井中学校 中2 志村鉄平
焼きいもをわって笑顔の仲なおり 福岡雙葉小学校 小6 安部可純
さざ波の向こう側から夏来る 練馬区立光が丘第一中学校 中3 友田絵梨

長谷川櫂  選
【特選】
こおろぎは風に♪をつけている 江東区立東陽中学校 中1 田中保希
手袋をなくした右手ポケットに 江東区立第二亀戸小学校 小6 三田村和音
まん月をわってうさぎとはんぶんこ 千葉県我孫子市立新木小学校 小3 井手来美
【入選】
弟に光りを分けた花火かな 江東区立八名川小学校 小5 金子優希
学校に行けばいくほどさくらさく 千葉県我孫子市立新木小学校 小4 福井瑠菜
手の中で生まれたばかり流れ星 江戸川区立南篠崎小学校 小4 堀川蒼空
この恋は期間限定ラムネ色 新宿区立新宿西戸山中学校 中1 岡本真奈
かき氷あっという間に水たまり 横浜市立岩井原中学校 中3 窪田彩七
さようなら義務教育の暑い夏 岐阜県加茂郡川辺町立川辺中学校 中3 田原菜々美
入学式出会いと別れを見守る木 江東区立深川小学校 小5 重藤日向
どんぐりがおふろにはいってつるつるだ 江東区立数矢小学校 小1 石田航太郎
飛行機が背骨を渡る鰯雲 東京都江東区立深川第七中学校 中3 永井晴香
穴あいた心の中に流れ星 八王子市立由井中学校 中2 内村柚月
【佳作】
木枯らしと同じ音するリコーダー 川崎市立住吉小学校 小6 村田康真
うろこ雲思い出せないあの漢字 江東区立第二大島小学校 小6 岩渕凌我
ちょっとだけ授業中断窓の虹 東京都江東区立深川第七中学校 中1 今井結
スニーカーかかとつぶして夏深む 仙台市立郡山中学校 中3 明日彩華
こたつには家ぞくの足がいっぱいだ 木更津市立請西小学校 小5 清水藍
きごがつきはいくができるひつじ雲 北区立西浮間小学校 小6 山中琉我
セミの命まるで青春七日間 横浜市立岩井原中学校 中3 塚根賢芯
背徳のアイスクリーム午前二時 横浜市立岩井原中学校 中3 松崎朱也花
暗闇は冬の入り口肝試し 江東区立南陽小学校 小5 牧野小春
しもがおりキラキラ光る通学路 江東区立有明小学校 小5 佐々木碧昊
雨の日の中庭子亀が歩いてる 高岡市立伏木小学校 小4 中大晟
いわし雲なんて小さな自分だろ 中央区立月島第一小学校 小4 中島祥
たいやきのひとみにほれてかっちゃった 中央区立月島第一小学校 小5 本間桜羽
英単語一つ覚えて小鳥くる 東京都江東区立深川第七中学校 中3 塩原幸
手の上でゆかいにおどるは焼芋だ 名古屋市立山田中学校 中3 小川湊

【研究会推薦】
こおろぎは風に♪をつけている 江東区立東陽中学校 中1 田中保希
うろこ雲思い出せないあの漢字 江東区立第二大島小学校 小6 岩渕凌我
スニーカーかかとつぶして夏深む 仙台市立郡山中学校 中3 明日彩華
秋燕忌母の使っていた辞典 江東区立東陽中学校 中1 前薗輝
姉の背が遠くなってく盆踊り 横浜市立岩井原中学校 中3 平山結衣
天高しきれいさっぱり行事無し 大阪星光学院中学校 中1 松澤空弘
じゃんけんで夏のたのしみ決めていく 甲府市立南西中学校 中3 小池真莉香
七夕のおねがいごとはローマ字で 土佐市立高岡第一小学校 小3 時久陽依
クワガタを猫と一緒にのぞきこむ 柳井市立柳井西中学校 中3 金井つぐみ
大根干す祖母の両手の温かさ お茶の水女子大付属中学校 中3 大橋馨子
なつやすみせのびしているおんどけい 葛飾区立新宿小学校 小2 中山たく海
冬が来た図書館の本かたくなる 品川区立後地小学校 小4 高山菜摘
石榴の実のどを過ぎても赤い味 山手学院中学校 中3 加藤渚
PK戦決めろ決めろとせみが鳴く 京都市立音羽中学校 中3 奥田玲音
コスモスはグーチョキパーで花がさく 江東区立数矢小学校 小3 望月隆ノ介
妹が口を結んだ七五三 江東区立第二亀戸小学校 小6 出口華音
おいコロナ最後の試合やらせてよ 高松市立桜町中学校 中3 川角侑生
青空を丸呑みしようと入道雲 鹿児島市立坂元中学校 中2 渋谷みう
サイダーがのどのおくでもさけんでる 土佐市立高岡第一小学校 小4 山平彩結
鰯雲見上げている人見ている子 東京都江東区立深川第七中学校 中3 阪本京

5/29(土)ズームできごさい+ 講師は森岡正博さん

きごさいBASE 投稿日:2021年2月28日 作成者: dvx223272025年9月28日

さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」。
今回の講師は、東京に唯一残る手縫いの着物仕立て工房「尾張屋」の四代目 森岡正博さんです。
講演の後、句会もあります。(選者:森岡正博、長谷川櫂)
今回はコロナ禍の状況を踏まえ、Zoomを使ったオンライン講演となります。
Zoomは、パソコン、スマートフォン、タブレットを使用されていれば、比較的簡単に視聴できます。ただし事前に参加申し込みが必要です。詳細は下記の<申込み案内>をご覧ください。

演 題 : 日本女性の着物の役割
講 師 : 森岡 正博 (もりおか まさひろ)
プロフィール :  昭和23年10月23日東京生まれ。青山学院大学経営学部経営学科卒。職業訓練指導員。国家検定一級和裁技能士。職業和裁技能検定一級和裁士。平成18年東京都優秀技能者(東京マイスター)知事賞受賞。着物仕立て工房「尾張屋」代表。

講師のひと言 : 着物文化には、日本人らしい考えが息づいています。例えば『モノを大切にする』ということ。
親から子へ、そして傷んで古くなれば布団や座布団に、布一枚の命を余すことなく永く使う。”心を砕いてものを作り、できた物の命を全うする” これこそ「和」の心意気で、日本の魅力でした。
今回は、着物の変遷、着物の文化、着物の現状を、絵図や写真とともに紹介し、着物を通じて日本文化の魅力をお伝えできたら、と願っております。

日 時: 2021年5月29日(土)13:30〜16:00(13:15~ Zoomに入場開始)
13:30~14:45 講演
14:50~15:20 句会(選句発表)
15:20~16:00 長谷川櫂(きごさい代表)との対談、質疑応答

<申込み案内>
1. 参加申し込み受付 5/19(水)まで
2. 参加費:きごさい会員:1,000円  会員外:2,000円
振込先:ゆうちょ銀行 〇五九支店 当座 0059738
エヌピーオーホウジンキゴトサイジキノカイ
5/19(水)までにご入金をお願いします。
3.ZoomのURL、句会案内、講演資料
申込みと入金された方に後日メールで配信します。かならずご確認ください。
4.句会:当期雑詠5句 前日投句です。 選者:森岡正博、長谷川櫂
前日5/28日17時までに所定のフォームから投句。ただし句会の参加は自由です。

今回はZoomを使ったオンライン講演会です。5/19(水)までに参加申し込みをして、後日メール配信するZoom入室URLなどの案内をご確認いただかないと、当日視聴できません。よろしくお願いいたします。

恋の俳句大賞(2020年後期)は盛武虹色さん

きごさいBASE 投稿日:2021年2月14日 作成者: dvx223272021年2月21日

 恋の俳句大賞(2020年後期)は盛武虹色さん(16)の次の句に決まりました。盛武さんにはクリストフル社の銀の写真たてを賞品としてお贈りします。

【大賞】
わたくしの全てが君になり桜      盛武虹色
【選評】「わたくしのすべてが君に」なるということは現実にはあり得ない。しかしそう思い込んでしまうのが恋。(村松二本)
【受賞者のコメント】自分の気持ちを大胆に表した句での受賞を嬉しく思います。これからも俳句を続けていきたいです。(盛武虹色)

☆ 村松二本選     
【特選】     
わたくしの全てが君になり桜      盛武虹色
あなたかもしれぬ狐火見失ふ      小鞠
カタコトの仏語で恋をして晩夏     澤田紫
蟷螂や束縛してもいいですか      茂る
結婚の報告西瓜ぶら下げて       澤田紫
【入選】     
百千鳥二人の恋を囃しけり       川辺酸模
一羽しかおらぬ白鳥君と見る      くにくに
ふるさとに待つ人のゐて冬紅葉     山田蹴人
春の恋一歩一歩がハ長調        粕谷経
カステラのやうな貴方と冬夕焼     城内幸江
初詣夫あるひとの遠会釈        中島紀生
銀山温泉の雪に蕩けて君といる     宮井いずみ
ダイヤモンドダストを二人寝転んで   小島寿々
今宮で見初めし君は残り福       辻雅宏
先輩の机見に行く冬休み        山田蹴人
鼻の先冷たき君にキスをする      森教安
好きな子の胸が気になる赤い羽根    山田蹴人
その人を愛せてゐるか古炬燵      山田蹴人
聖なる夜きれいな靴で逢ひにゆく    山田蹴人
振り向かぬひとだから好きポインセチア 澤田紫
うたかたの恋と知りつつ夏薊      馬岡裕子
大仏の目線のさきの花衣        倉森信吉
あなたとの距離は甘夏ふたつ分     岩崎淳也

☆趙栄順 選     
【特選】     
マスクならアイラブユーつて言えるのに のはら石英
【選評】マスクをしていれば君に勇気を出して恋の告白ができそうな気がする。コロナの時代でなくとも。
書くことは君のことだけ日記買ふ    中分明美
【選評】日記なら心の中にいる君に語ることができる。長い語らいはゆっくりと恋を育てる。
【入選】     
三月や恋と進路の交差点        矢作輝
春浅ききみの机へチョコレート     川辺酸模
彼の人の視線で選ぶ春ショール     粕谷経
マドンナも老いて孫連れ七五三     辻雅宏
たつた今別れてきたの雪払ふ      山田蹴人
十八の君とバイクに冬北斗       鹿沼湖
マフラーに顔をうづめて待つ返事    山田蹴人
文系が理系に恋す冬銀河        川守田京子
綺麗だね秋桜じゃなくて君のこと    加藤清美
夏期講習あなたの横が指定席      水野綾子
ダイヤモンドダストを二人寝転んで   小島寿々

☆長谷川櫂 選
【特選】     
妹と言はれて泣いた日の香水      高岡幸子
【選評】女としてみてもらえないのが悲しい。おもしろい恋の局面を描く。
【入選】     
夕立後テニスコートに映る君      粕谷経
ダイヤモンドダストを二人寝転んで   小島寿々
あなたとの距離は甘夏ふたつ分     岩崎淳也

1月 きごさい+(講座と句会)報告

きごさいBASE 投稿日:2021年2月7日 作成者: dvx223272025年9月25日

1月30日(土) 第21回「きごさい+」がズームで開催されました。
講師は総合地球環境学研究所所長の安成哲三先生。日本の豊かな四季や風土の多様性は、世界でも類を見ない地理的条件下にあったから。日本列島の気候と風土、文化を地球全体から俯瞰的に見たお話に魅了されました。

俳句とアジアモンスーン気候、そして日本の風土
安成哲三(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 所長)

多様で豊かな日本列島の自然
 日本列島は、米国カリフォルニア州よりも狭い面積ながら、北は北海道から南は琉球列島まで、気候的には亜寒帯・温帯:亜熱帯をカバーし、生物相(生態系)も海岸から高山帯を含む地形要因もあり、非常に多様である。とくにユーラシア大陸の東岸に位置し、アジアモンスーン気候下にあるため、夏冬の季節変化も大きい。大陸から離れた列島であり、黒潮・対馬暖流と親潮に囲まれた地理的条件は、列島内の気候や生物相の地域的分布を、アジアモンスーンの影響下にあるアジアの他の地域には見られない、豊かさと多様さ、そして複雑さがある。

夏も冬もアジアモンスーン
 アジアモンスーンは、ユーラシア大陸の東部から南部にかけての広大な地域で卓越する季節風である。夏はインド洋から大陸に向けて湿った風が吹きつけ、インド亜大陸から東南アジア、そして中国を含む東アジアに雨季をもたらす。亜熱帯の緯度に位置するチベット高原とヒマラヤ山脈は、その地形の効果により、アジアモンスーンを世界でも類を見ない強い季節風と雨季をもたらしている。東アジアでは、チベット高原の北側に吹く乾いた空気とのあいだに梅雨前線を形成して雨をもたらす。
冬は、チベット高原が北極地域からシベリアで形成される寒気団を堰き止める役割を果たすため、シベリアからの寒気は、東アジアの日本列島に吹き付け、さらに南下して、東南アジアからインド亜大陸の広い地域に乾季をもたらす。しかし、日本列島では、日本海を北上する対馬暖流のために、冷たく乾いたシベリアからの北西季節風は、水蒸気をもらって湿潤で不安定な大気へと変質し、雪雲を発達させて日本海側に大量の雪を降らせるいっぽう、太平洋側は、山を越えて空っ風となるという、極めて対照的な気候をもたらしている(安成、2018)。

照葉樹林文化とブナ林文化-日本列島の風土の二つの基層
 夏には西南日本を中心に蒸し暑さと雨をもたらし、冬には東北日本を中心に寒さと雪をもたらすアジアモンスーンは、日本列島の植生(森林)分布を決めている。それが常緑広葉樹を中心とする照葉樹林(暖温帯林)であり、ブナ・ナラなどの落葉広葉樹に代表される冷温帯林である。照葉樹林は、ヒマラヤの麓から中国南部に拡がる湿潤亜熱帯のモンスーン気候帯に分布し、ブナ林は、冬の積雪の多いところに分布しており、冷涼な気候だけでなく冬季の積雪が十分な生育には必要とされている。
照葉樹林帯では、山地では焼畑農業がおこなわれ、平地では水田稲作が拡大した地域とも重なり、茶の栽培やウルシの利用なども含めた照葉樹林文化といわれる自然と文化の複合が形成された(上山編、1969)。山地では焼畑農業がおこなわれ、平地では水田稲作が拡大した地域とも重なっている。一方、氷期が終わった(完新世といわれる)1万年以降に、列島に大陸から移動して定住した縄文人はまず東北地方から中部地方のブナ・ナラ林帯に住みつき、狩猟や漁労と共に、クリやクルミ、トチなどの木の実の採集と、後期には、稗やアワを中心とする畑田の開墾をしつつ、縄文文化を拡げていった(市川、1987)。5~6千年前の気候温暖期には、日本列島の人口は、中部から関東および東北地方が西南日本よりはるかに多かったと推定されている(Koyama, 1978)。
弥生文化は、完新世の温暖な気候の下で、南西日本での水田稲作の発展とともに列島を北上するが、縄文時代から弥生時代の気候の寒冷化などで、これらふたつの自然・文化複合の地域分布は行きつ戻りつしつつ、あるいは中部日本で混ざり合い、古代日本人の風土を形成していくことになる。
 水田稲作が西南日本から広がっていくと、収量のはるかに多い稲作が、収量の小さい畑ビエなどを圧迫していくことになり、弥生時代以降、西日本の人口が急激に増加していくことになる。やがて山城盆地を中心に、奈良・平安の都が築かれる頃には、ブナ・ナラ林文化は、東北・中部地方に限られた文化となっていった。

季語の起源と歴史
 『古今集』などでみられる和歌に始まったとされる「季語」は、山城盆地に住む王朝貴族が平安以来約400年間の詩歌の歴史の中で培ってきた自然への感性のあり方から「本意」として示されてきた(宮坂、2009)。俳諧連歌から発句の季語は、その後、江戸時代の京・大坂・江戸などでの武家・町人文化の中でさらに広大な裾野をもつ「季語のピラミッド」を形成してきた。その頂点には、「花」「ほととぎす」「月」「紅葉」「雪」 などである。ただ、いずれも、(「月」を除いては)、山城盆地周辺の照葉樹林を中心といた景観にもとづいており、「雪」にしても、盆地周辺での少ない雪の美であり、決して日本海側の大雪ではなかった。シラネ・ハルオ氏によると、その結果、近代になると、季節をめぐる連想、調和、優雅さに重きを置く、和歌を基盤とする世界観だけが「日本人」の唯一の自然観とみなされ、自然環境を再創造しようとしたその他の多彩な視点は見逃されてしまった、と指摘する(シラネ、2001)。
 近世の俳句を確立した松尾芭蕉は、このような都あるいは町を中心にした自然観に飽き足らず、「日々旅にして、旅を栖とす。」として旅を愛した。芭蕉にとって旅が意味したのは、まさに、新たな領域と言語を探求すべく不断に努力すること、そして詩的・文化的記憶の媒介者である自然や季節、風景に対するあらたな視点を常に探し求めることであった。

芭蕉は「おくのほそ道」で何を感じたのか
 では芭蕉は「おくのほそ道」の旅では何を求めていたのか。さまざまな論考があるが、ここは、たとえば長谷川櫂氏の「芭蕉の風雅」(2015)を参照されたい。ただ、長谷川氏も指摘しているように、松島から平泉の旅で、芭蕉には、西行的な中世の「歌枕」を追う姿勢は消え、東北の荒々しい自然と文化そのものを感じ取る姿勢へのかなり大きな変化が見られた。 平泉で訪れた中尊寺は奥州藤原氏三代の栄華の史跡のなごりのあるところで、三代の遺体がミイラとして残されている。実は、これらの棺の中から、数多くの穀物が見つかっており、特にヒエが最も多かった。支配階級であったかれら自らがヒエを主食とした「ブナ帯文化」での生き方をしていることがわかっている。
「五月雨の降りのこしてや光堂」と、ここで詠んだが、芭蕉がそのことを感じたかどうかは、もちろんわからない。 ただ、「夏草や兵どもが夢の跡」は、松島まで追い求めてきた「風雅」の気風を転換させた句ともいえる。(宮坂静生、2009)。
これ以降、日本海側に続く「おくのほそ道」の旅には、西日本の照葉樹林文化にはない、もうひとつの日本の風土の基層である「ブナ帯文化」の世界を、芭蕉は感じとっていたのではないだろうか。

参考文献:
安成哲三「地球気候学」(2018)東京大学出版会 208頁
上山春平編「照葉樹林文化-日本文化の深層」(1969) 中公新書 208頁
市川健夫「ブナ帯と日本人」(1987) 講談社現代新書 204頁
宮坂静生「季語の誕生」(2009) 岩波新書 208頁 
萩原恭男校注「芭蕉 おくのほそ道」(1979) 岩波文庫 290頁
ハルオ・シラネ「芭蕉の風景 文化の記憶」(2001) 角川書店 214頁
長谷川 櫂「芭蕉の風雅」(2015) 筑摩書房 237頁

句会報告   選者=長谷川櫂、安成哲三
◆ 長谷川櫂 選
【特選】
大寒や遥かに響く星のこゑ     ももたなおよ
春田打つアジアの米を継ぐひとり  西川遊歩
大寒の夜を香らせて大吟醸     北側松太
冬帽子山に生まれて山に死す    趙栄順
等圧線崩れ崩れて春そこに     葛西美津子
【入選】
ものの芽や雨の匂ひの吉野ヶ里   川辺酸模
春遠からじあんぱんをはんぶんこ  葛西美津子
子となりて転げてみたし春の雪   上田雅子
寒の餅丸むや夫と競ひつつ     宮本みさ子
幻の卑弥呼の国か黄砂降る     川辺酸模
腰強きアジアの風や麦を踏む    葛西美津子
とくとくと紅の水冬木の芽     飛岡光枝
煮凝やジュラ期の何ぞ沈むやも   吉安友子
つちふるやアジア大陸一跨ぎ    川辺酸模
重なりて水に沈みぬ寒の餅     宮本みさ子
雪解風北極星が濡れてゐる     趙栄順
色の無き庭の片隅冬薔薇      手塚清子
ばらばらと白き霰や夢の中     上松美智子
モンスーン鶯笛を鳴らしけり    村松二本
衛星ひまはり春月をよぎりけり   葛西美津子
色の無い夢を見るのか寒鴉     湯川晶月
打ち寄せる波より白き白魚かな   上田忠雄
荒東風や船底叩く波の音      川辺酸模
大寒の渚を濡れぬやうにゆく    宮本みさ子
春近しすぐに汚るるガラス窓    金澤道子
校正の赤ペン起こす寒気かな    西川遊歩
甘噛みの猫と暮らすや毛糸玉    遠藤みや子
米を撒く老人来たり寒雀      田中益美
春近し波すれすれを鳥の群     金澤道子

◆ 安成哲三 選
【特選】
春田打つアジアの米を継ぐひとり  西川遊歩
日向ぼこ留守居頼むと猫に言う   遠藤みや子
寒天干す蒼穹更に深めけり     吉安友子
雪重たし雪重たしと越の春     葛西美津子
春夕焼消えて重力地に戻る     中丸佳音
【入選】
赤道のひかり纏いて小鳥来る    金丸由美子
有明の海の濁りも春隣       上田忠雄
この国の湿気豊潤おぼろ月     西川遊歩
しんしんと音を閉じ込め滝凍る   吉安友子
腰強きアジアの風や麦を踏む    葛西美津子
大寒や剃り跡青き僧の列      湯川晶月
オリオンの恋しき地球青きかな   越智淳子
雪を漕ぐ深閑とした森の中     高橋慧
縁側に春待つこころ置いて来し   北側松太
初鰤の半額を買ふ夕餉かな     森川ヨシ子
荒東風や欠航告げる掲示板     川辺酸模
麦の芽に除染袋の影届く      宮本みさ子
雪の原貴婦人のごと一樹立つ    高橋慧

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長谷川櫂監修 季語と歳時記の会編著
小学館
1,600+税
2014年3月刊行


『花のテラスで Ⅱ』
福島光加
花神社
2300+税
2018年4月刊行


『花のテラスで』
福島光加
花神社
1,900+税
2014年9月刊行


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