【子季語】
神立、神の旅立
【解説】
陰暦十月、諸国の神々が出雲大社へ集まるために旅立つこと。男女の縁を結び給うために集まるという。相談を終えた神々は十月晦日にそれぞれの国に帰る。もともとあった田の神が秋の収穫をもたらしたのちに山に帰るという信仰と、出雲信仰が結びついたとされる。
【例句】
都出て神も旅寝の日数哉
芭蕉「己が光」
旅じたく神の御身をせはしなや
一茶「七番日記」
凩に葉守の神も旅出哉
北冥「恒誠」
かつらぎの神もおたちか小夜しぐれ
露川「小弓俳諧集」
【子季語】
神立、神の旅立
【解説】
陰暦十月、諸国の神々が出雲大社へ集まるために旅立つこと。男女の縁を結び給うために集まるという。相談を終えた神々は十月晦日にそれぞれの国に帰る。もともとあった田の神が秋の収穫をもたらしたのちに山に帰るという信仰と、出雲信仰が結びついたとされる。
【例句】
都出て神も旅寝の日数哉
芭蕉「己が光」
旅じたく神の御身をせはしなや
一茶「七番日記」
凩に葉守の神も旅出哉
北冥「恒誠」
かつらぎの神もおたちか小夜しぐれ
露川「小弓俳諧集」
【子季語】
玉苗、早苗束、余り苗、浮苗、早苗籠、苗運び、苗配り、苗打ち、早苗舟
【関連季語】
早乙女、早苗饗、植田、苗取
【解説】
稲の苗のこと。おもに、田植えのときの苗をいう。そのみずみずしさをたたえて玉苗という美しい呼び名もある。水を張った田に苗の束を投げ込むのを苗打ち、方々の田に苗を分けるのを苗配り、舟を使えば早苗舟などの子季語もある。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
早苗とる山田のかけひもりにけり引くしめなはに露ぞこぼるる 源経信『新古今集』
【実証的見解】
さなえの「さ」は、早乙女の「さ」は、さなぶりの「さ」などと同様に、「田の神」のこと。
【例句】
早苗とる手もとやむかししのぶ摺
芭蕉「おくのほそ道」
西か東か先早苗にも風の音
芭蕉「信夫摺」
早苗にもわが色黒き日数かな
芭蕉「泊舟集」
雨折をり思ふ事なき早苗かな
芭蕉「木曽の谷」
里の子が燕握る早苗かな
支考「続猿蓑」
山おろし早苗を撫て行方かな
蕪村「蕪村遺稿」
翁さび媼さびたり早苗取る
長谷川櫂「初雁」
【子季語】
さうとめ、五月女、月乙女、五月乙女、早女房、田植女、植女
【関連季語】
田植、早苗
【解説】
田植を行う女性をいう。昔は田植の祭儀にかかわる女の人が田の神に仕える装いとして、紺の単衣に赤い帯、白い手拭をかぶり、紺の手甲脚絆、菅笠のそろいの姿で一列にならんで苗を植えた。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
雨過ぐる真菅の小笠かたよりに小田の早乙女早苗とるなり 『夫木和歌抄』
【実証的見解】
さおとめの「さ」は、さなえの「さ」、さなぶりの「さ」などと同様に、「田の神」にささげる稻のことをさす。早乙女は、田の神に仕える乙女であり、「諸社の神田を植うる女のこと」(『滑稽雑談』)であった。
【例句】
五月乙女にしかた望まんしのぶ摺
芭蕉「曾良書留」
早乙女の下り立つあの田この田かな
太祇「太祇句選後編」
早乙女の五月雨髪や田植笠
許六「桃の杖」
かつしかや早乙女がちの渉し舟
一茶「題葉集」
早乙女の祭りのやうに揃ひ出る
涼莵「花橘」
さをとめや汚れぬ顔は朝ばかり
其角「句兄弟」
早乙女やひとりは見ゆる猫背中
召波「春泥発句集」
早乙女や泥手にはさむ額髪
村上鬼城「定本鬼城句集」
早乙女の一群すぎぬ栃の花
前田普羅「飛騨紬」
早乙女の股間もみどり透きとほる
森澄雄「花眼」
早乙女の笠あぐるたび海青く
長谷川櫂「松島」
【解説】
陰暦十月十日に長野県や山梨県などで行われる行事。案山子はもともと山から降りてきた田の神と考えられていた。田の神が山へ帰るこの日、田から案山子を引き上げ、餅や大根を供えて感謝するというもの。
【解説】
西日本の「亥(い)の子(こ)」に対し、東日本で陰暦十月十日の夜に農村で行う収穫祭のこと。この日に田の神が山へ帰るとされ、新米で作った餅などを供えたり、子供たちが藁束で地面をたたいて村中を回ったりした。
【子季語】
神還
【解説】
出雲大社へ参集していた神々が会議を終えてもとの社へお帰りに なる。それを迎える祭事、行事。陰暦十月末か十一月一日とするところが多い。田の神が冬の間は山に帰るとする古い信仰が原型といわれる。
【例句】
水浴びて並ぶ烏や神迎へ
一茶「九番日記」
暗に踏む木の葉かわくや神むかへ
野坡「野坡吟草」
神迎水口だちか馬の鈴
酒堂「猿蓑」
【子季語】
おさばい降し/そうとく降し
【解説】
田の神を田へ招きおろすこと。田植の前の祭事である。
【子季語】
さのぼり/さなぼり/うまさなぶり/代みて/わさのぼる/田植仕舞
【解説】
田植を終って田の神を送る祭。転じて田植の仕舞の祝宴、休み日をいう。「サ」は田の神のこと。田植後、田の神が天に帰る日の祭を「サノボリ」といい、それが訛ったもの。赤飯を炊いたり餅を搗いたりして祝う。
【子季語】
恵美須講/戎講/恵比須講/夷講/夷子祭/夷子切
【解説】
七福神のひとつ恵比須神の祭礼。陰暦の十月二十日や十一月二十日などに行われる。恵比須は、農村では田の神、漁村では漁の神、商家では商売繁盛の神で、地方によって様々な祝い事がなされる。
【例句】
例の鯛も事あたらしや恵美酒講
重頼「桜川」
振売の雁あはれなりゑびす講
芭蕉「炭俵」
まないたに小判投げけり夷講
其角「末若葉」
行きかかり客に成りけりえびす講
去来「韻塞」
夷講の中にかかるや日本橋
許六「正風彦根躰」
前髪に恋はありけり夷講
召波「春泥句集」
夷講やことに難波の肴市
蘭更「半化坊句集」
独り居や飯買つて来て夷講
一茶「文政九年句帖」