尾花(おばな/をばな) 三秋
【子季語】
花薄/穂薄/薄の穂/初尾花/村尾花/尾花が袖/尾花の波
【解説】
「芒」という季語が葉、茎、花の全体像を指すのに対し、「尾花」は 芒の花だけをさす季語である。夏から秋にかけて二十センチから 三十センチほどの、黄金色で箒状の花穂をつける。花穂は熟すに したがって白っぽくなり、晩秋には白い毛の生えた種を風に飛ば す。動物の尾に似ているところから尾花といわれる。
【科学的見解】
ススキ(芒)は、小花を集合させた花序を形成し、小花の付け根に冠毛を有するために種子を風によって散布している。オギの花もススキと似ているが、ススキの小花先端にはのぎと呼ばれる細長い毛があるのに対して、オギの小花の先端には毛がないため、よく見ると区別ができる。(藤吉正明記)
【例句】
花すすき寺あればこそ鉦が鳴る
末山「続今宮草]
武蔵野や鑓持もどく初尾花
言水「誹枕」
おもかげの尾花は白し翁塚
浪化「そこの花」
出帆まねく遊女も立てりはな薄
蓼太「蓼太句集三稿」
野の風や小松が上も尾花咲く
太祗「俳諧新選」
伸び上る富士のわかれや花すすき
几董「井華集」
むら尾花夕こえ行けば人呼ばふ
暁台「暁台句集」
空くせや尾花がすゑの猪子雲
白雄「白雄句集」
猪をになひ行く野やはなすすき
白誰「白雄句集」
秋の日やうすくれなゐのむら尾花
青蘿「青蘿句集」