蟇(ひきがえる、ひきがへる)三夏

【子季語】
蝦蟇、がまがへる、蟾、蟾蜍
【解説】
大型のカエル。竹藪や林に棲み、普段はあまり水に入らない。冬眠し、夏になると活発に動き出す。「ひき」「がまがえる」「がま」とも呼ばれ、蟇、蝦蟇、蝦、蟾蜍などの漢字をあてる。
【来歴】
『山の井』(正保5年、1648年)に所出。
【科学的見解】
蟇は、ヒキガエル科に属する大型の両生類で、亜種も含めると近畿以西から九州屋久島までに分布するニホンヒキガエル、北海道南部から近畿までに分布するアズマヒキガエル、本州中部と近畿付近に分布するナガレヒキガエルが知られている。ニホンヒキガエルとその亜種であるアズマヒキガエルは、標高の低い平野から標高二千五百メートル付近の亜高山帯まで垂直的に幅広く分布し、都市部の環境から水田付近の草地及び森林まで多様な環境に生息している。一方、ナガレヒキガエルは、山地森林内の渓流付近を生息環境としている。それらすべての成体は、いぼ状の突起がある厚い皮膚をしており、眼の後ろに耳腺と呼ばれる有毒物質を分泌する器官を持ち、跳躍するより歩いて行動するところが特徴である。それらの卵塊はヒモ状をしており、生まれた幼生は基本的に黒色である。秋に産卵された幼生はそのまま越冬する場合もあるが、春に生まれた幼生は夏頃には成体となり、陸上生活に移行していく。これら以外のヒキガエル科の種としては、沖縄県の宮古島にミヤコヒキガエルや沖縄県の石垣島に移入・定着が確認されているオオヒキガエルが知られている。オオヒキガエルは、在来種に対する悪影響が懸念されているため、環境省により特定外来生物に指定され、石垣島及びその近隣の島々において駆除等の環境保全活動が行われている。(藤吉正明記)
【例句】
這ひ出でよ飼屋が下の蟾の声
芭蕉「奥の細道」
憂き時は蟇の遠音も雨夜かな
曾良「蛙合」
月の句を吐いてへらさん蟾の腹
蕪村「蕪村文集」
雲を吐く口つきしたり蟇
一茶「おらが春」
額散るや瞼瞬く蟇
島村元「島村元句集」
蟾蜍長子家去る由もなし
中村草田男「長子」
蟇誰かものいへ声かぎり
加藤楸邨「颱風眼」
だぶだぶの皮のなかなる蟇
長谷川櫂「天球」
