河鹿(かじか)三夏
【子季語】
河鹿蛙、河鹿笛
【解説】
清流に美しい声で鳴くかえるの一種。古く「かはづ」と呼ばれたのはこの河鹿のこと。
【来歴】
『俳諧通俗誌』(享保元年、1716年)に所出。
【科学的見解】
河鹿は、アオガエル科に分類されており、標準和名はカジカガエルである。本種は、本州から九州まで分布しており、河川上流から中流域の礫や小石が堆積した河原の存在する流水域を生息環境としている。そのため、体色は岩に擬態するために灰色が中心となり、褐色から黒色のまだら模様となっている。繁殖は、四月から八月までの期間であり、雄は雌を引寄せるために石の上でフィ・フィ・フィ・フィ・フィ・フィーと連続して鳴く。産卵は、五センチメートル程の卵塊であり、生まれた幼生は流水域に適した流線型の形状をしている。また、幼生の口は他の種と比べて大きく、流水域ではその大きな口を利用して岩に張り付き、表面に付着した藻類等を食す。変態後の成体は、トビケラ類等の昆虫類を主食としている。ちなみに、河川上流域に生息するカジカという淡水魚類が存在するが、その種との関係性は何もないとのことである。沖縄等の亜熱帯地域においては、奄美大島から西表島までに分布しているリュウキュウカジカガエルという種が知られており、本種が山地の渓流域に限定して生息しているのに対して、リュウキュウカジカガエルはそれ以外の草地や森林、海岸付近まで幅広い環境に適応して生息しているところが大きく異なる。(藤吉正明記)
【例句】
河鹿きく我衣手の露しめり
杉田久女「杉田久女句集」
河鹿鳴いて石ころ多き小川かな
正岡子規「子規全集」
笠を手にいそぐ夕べや河鹿鳴く
正岡子規「子規全集」
河鹿啼く水打つて風消えにけり
臼田亜浪「旅人」
鳴きやんでまなこ寂しき河鹿かな
日野草城「花氷」
