彼岸(ひがん) 仲春
【子季語】
彼岸中日、彼岸太郎、入り彼岸、さき彼岸、初手彼岸、終ひ彼岸、彼岸ばらい、彼岸前、彼岸過、彼岸講、万灯日
【関連季語】
秋彼岸、春分
【解説】
春分の日を中日として、その前後三日の計七日間を指す。このころになると、「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように寒さも治まる。先祖の墓参りなどの行事がある。
【来歴】
『毛吹草』(正保2年、1645年)に所出。
【実証的見解】
彼岸は、亡き先祖に感謝し、その霊をなぐさめ、自分も身をつつしみ極楽往生を願う日本特有の仏教行事である。『源氏物語』にその記述があり、平安時代にはすでに行われていたとされる。太陽信仰と深いかかわりがあり、真東から上がって真西に沈む太陽を拝んで、阿弥陀如来が治める極楽浄土に思いをはせたのが起源とされる。「日の願(ひのがん)」から「彼岸」となったという説もある。彼岸は春彼岸と秋彼岸とがあり、春彼岸は種まきの季節で、その年の豊穣を祈る気持ちがつよく、秋彼岸は収穫に感謝する気持ちがつよい。
【例句】
命婦よりぼた餅たばす彼岸哉
蕪村「蕪村句集」
毎年よ彼岸の入に寒いのは
正岡子規「寒山落木」
竹の芽も茜さしたる彼岸かな
芥川龍之介「澄江堂句集」
蝌蚪生れて未だ目覚めざる彼岸かな
松本たかし「松本たかし句集」