蝌蚪(かと、くわと) 晩春
【子季語】
お玉杓子、蛙の子、蛙子、蛙生る、蝌蚪の紐、数珠子、蝌蚪の水
【関連季語】
蛙
【解説】
蛙の子である。ちょろちょろと泳ぎまわる姿が愛らしく、次第に手足が生え尾がとれてゆく。形が杓子に似ていることからこの名がある。
【来歴】
『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。
【実証的見解】
春、蛙は、池や水田、沼などの水溜りでゼリー状の紐でつながる卵を産む。この数珠子は十日程で孵化しお玉杓子となる。お玉杓子は、水中に棲み、水中で変態する。後肢は尾の基部から伸び始め、前肢は鰓の内側で発達する。前肢が出ると水を出るようになり、尾が消失する。変態には二~三ヶ月を要する。ウシガエルのように、越冬した後、変態するものもある。
【例句】
蛙子や何やら知れぬ水の草
蝶夢「発句題叢」
蛙子の蛙にならぬ水もなし
樗堂「発句題叢」
かたまりて蛙子くもる沢辺かな
未鳳「新類題発句集」
蛙子の牛に嗅るゝ家陰かな
葛三「新五百題」
この池の生々流転蝌蚪の紐
高浜虚子「七百五十句」
川底に蝌蚪の大国ありにけり
村上鬼城「定本鬼城句集」
富士高くおたまじやくしに足生えぬ
原石鼎「原石鼎全句集」
松風に蝌蚪生れたる山田かな
芝不器男「不器男全句集」
尾を振つて流され行くや蝌蚪一つ
星野立子「立子句集」
お玉杓子玉の命の一つづつ
長谷川櫂「初雁」