蛙(かわず、かはづ)三春
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【子季語】
殿様蛙、赤蛙、土蛙、初蛙、昼蛙、夕蛙、夜蛙、遠蛙、筒井の蛙、蛙合戦、鳴く蛙、苗代蛙、田蛙
【関連季語】
蝌蚪、蟇、牛蛙
【解説】
蛙は、田に水が張られるころ、雄は雌を求めてさかんに鳴き始める。昼夜の別なくなき続け、のどかさを誘う。「かはず」はもともとカジカガエルのことをさしていたが、平安時代から一般の蛙と混同されるようになった。
【三春】
【科学的見解】
カエル類は、両生類(無尾目)に分類され、同じ両生類のイモリ類(有尾目)とは後ろ足が発達することや尻尾がないこと等で区別されている。カエル類の幼生(オタマジャクシ)は、鰓呼吸であるため、水中で過ごす必要があり、生息環境は水辺に限定される。幼生から成体へ変化した後、多くの種はそのまま水辺環境で生息し続けていくが、水辺周辺の草地や森林環境に移動していく種も存在する。成体が水辺以外の環境で生息する種としては、ニホンヒキガエル、アズマヒキガエル、ヤマアカガエル等が知られている。しかし、それらの種であっても極端な乾燥には弱いために、落ち葉や枯草・枯れ木の中に身を隠したりすることで乾燥を防ぎ、より湿度の高い夜間に活動することで生息環境を広域化・多様化している。成体は、腹側の皮膚から直接水を吸収できるため、時折水に腹部をつける必要がある。食性としては、幼生の時期には分解途中の有機物や藻類等を中心にした雑食性であるが、成体になると完全に肉食性に変化する。体色は、生息環境に大きく依存し、草の茂みや樹上生活を行うカエル類は緑色をした種が多く、水田の水路や河川及び地上徘徊性のカエル類は茶色から黄土色の体色をしている。成体は、のどやほおにある鳴のうと呼ばれる袋を用いて肺の間で空気を行き来させることで発音しており、その音を利用して雌の誘引や縄張り等を主張している。また、身近なカエルとして知られているニホンアマガエルでは、低気圧が近づくと共鳴する習性(雨鳴き)も知られている。日本に生息するカエル類は、亜種も含めて五十種程度存在するが、亜熱帯の一部と小笠原等に侵入したオオヒキガエルや北海道南部から南西諸島まで広範囲に定着したウシガエル等の外来種も含まれている。(藤吉正明記)
【例句】
古池や蛙飛込む水のおと
芭蕉「春の日」
月に聞て蛙ながむる田面かな
蕪村「蕪村句集」
閣に座して遠き蛙をきく夜哉
蕪村「蕪村句集」
痩蛙負けるな一茶是に有
一茶「七番日記」
田を売ていとど寝られぬ蛙かな
北枝「喪の名残」
山蛙けけらけけらと夜が移る
臼田亜浪「定本亜浪句集」
門しめに出て聞て居る蛙かな
正岡子規「寒山落木」
漣の中に動かず蛙の目
川端茅舍「川端茅舍句集」
チグリスのうつつの蛙鳴きにけり
加藤楸邨「鶴と煙突」
子を呼んで蹠踏ますや初蛙
長谷川櫂「蓬莱」
目もとまで喉ふらませ初蛙
長谷川櫂「虚空」
