燕(つばめ)仲春
【子季語】
乙鳥、乙鳥(おつどり)、玄鳥、つばくら、つばくろ、飛燕、濡燕、川燕、黒燕、群燕、諸燕、夕燕 燕来る、初燕
【関連季語】
夏燕、燕帰る、燕の子
【解説】
燕は春半ば、南方から渡ってきて、人家の軒などに巣を作り雛を育てる。初燕をみれば春たけなわも近い。
【来歴】
『花火草』(寛永13年、1636年)に所出。
【文学での言及】
燕来る時になりぬと雁がねは国思ひつつ雲隠り鳴く 大伴家持『万葉集』
【実証的見解】
ツバメはスズメ目ツバメ科の夏鳥で、日本には二月下旬から五月にかけて渡ってくる。雀よりやや大きい。背は黒く腹は白い。喉と額が赤く、尾に長い切れ込みがある。翼が大きくよく飛ぶが、脚は短く歩行に不向きで、地面に降りることはめったにない。食性は肉食で、空中にいる昆虫などを捕食する。人が住むところで営巣する傾向がある。これは、天敵である鴉などが近寄りにくいからだとされる。
【例句】
盃に泥な落しそむら燕
芭蕉「笈日記」
蔵並ぶ裏は燕の通ひ道
凡兆「猿蓑」
夕燕我にはあすのあてはなき
一茶「文化句帖」
海づらの虹をけしたる燕かな
其角「続虚栗」
大和路の宮もわら屋もつばめかな
蕪村「蕪村句集」
大津絵に糞落しゆく燕かな
蕪村「蕪村句集」
つばくらや水田の風に吹れ皃(がほ)
蕪村「蕪村句集」
燕啼て夜蛇をうつ小家哉
蕪村「蕪村句集」
滝に乙鳥突き当らんとしては返る
夏目漱石「漱石全集」
初燕見てよき駅や旅こごろ
河東碧梧桐「新傾向句集」
船宿の朝行燈や初乙鳥
井上井月「井月句集」
乙鳥や小路名多き京の町
井上井月「井月句集」
春すでに高嶺未婚のつばくらめ
飯田龍太「百戸の谿」
初燕木々また朝をよろこべり
飯田龍太「遅速」
海岸にさびれしホテル初燕
長谷川櫂「果実」