桜鯛(さくらだい、さくらだひ) 晩春
【子季語】
花見鯛、乗込鯛、烏賊鯛、姿見の鯛
【解説】
真鯛は春、産卵のため内海に集まる。雄の腹は桜色に染まり、それが桜の花時と重なることから桜鯛と呼ばれる。
【来歴】
『俳諧初学抄』(寛永18年、1641年)に所出。
【文学での言及】
桜鯛花の名なれば青柳の糸をたれてや人の釣りけん 言僧正公朝『夫木和歌抄』
【実証的見解】
マダイは、スズキ目タイ科に分類される魚で、北海道以南から南シナ海北部まで広く棲息する。体調は三十センチから七十センチくらい。大きいものになると一メートルを越えるものもある。体はほぼ楕円形で、顎が前方突き出ている。水深三〇メートルから二〇〇メートルに棲息し、小魚、甲殻類、貝類などを捕食する。頑丈な歯を持ち、甲殻類の殻も噛み砕いてしまう。春季の産卵期のマダイは脂がのっており、「桜鯛」と呼んで特に珍重する。
【例句】
俎板に鱗ちりしく桜鯛
正岡子規「子規句集」
こまごまと白き歯竝や桜鯛
川端茅舎「川端茅舎句集」
包丁を取りて打撫で桜鯛
松本たかし「野守」
花散るや鯛は好みの潮かげん
井上井月「井月の句集」
命ごとぶつ切りにして桜鯛
長谷川櫂「蓬莱」