稲雀(いなすずめ)三秋
【子季語】
秋雀
【関連季語】
案山子
【解説】
稲が実る頃、群れをなしてついばみにやってくる雀をいう。農家にとっては頭痛の種。
【科学的見解】
スズメは、スズメ科の野鳥で、全国的に留鳥として生息している。本種は、雑食性であるが、草の種子を食す傾向が強い。草の種類としては、イネ科やタデ科、キク科等小粒状の乾いた種子を好む。そのため、本種にとって秋の稲穂は絶好の餌となる。本種は、秋の実り前からイネの未熟な種子を嘴でつぶし、中の胚乳を食べるほか、稲刈り後の水田に残された落穂も目ざとく見つけ、ついばんでいく。イネの食害としては、本種の影響が強いが、その他に同じ種子食の傾向の強いカワラヒワやスズメの近縁種であるニュウナイスズメも挙げられる。(藤吉正明記)
【来歴】
芭蕉の「稲雀茶の木畠や逃げどころ」の句が「季の詞」として詠まれた最初といわれる。
【例句】
稲雀茶の木畠や逃げどころ
芭蕉「西の雲」
なき出して米こぼしけりいな雀
智月「有磯海」
蛤蜊の姿も見えず稲すゞめ
李由「韻塞」
稲雀稲を追はれて唐秬へ
正岡子規「獺祭句帖」
稲雀ぐわらんぐわらんと銅羅が鳴る
村上鬼城「鬼城句集」