千鳥(ちどり)三冬
【子季語】
目大千鳥、大膳、胸黒、小千鳥、白千鳥、鵤千鳥、千鳥足、千鳥掛、磯千鳥、浜千鳥、浦千鳥、島千鳥、川千鳥、群千鳥、友千鳥、遠千鳥、夕千鳥、小夜千鳥、夕波千鳥、月夜千鳥、鵆
【解説】
チドリ科の鳥の総称で留鳥と渡り鳥がある。嘴は短く、色は灰褐色。足を交差させて歩むのが千鳥足。酔っ払いの歩行にたとえられる。
【科学的見解】
千鳥は、チドリ科に属す野鳥の総称で、日本では十五種程度が記録されている。代表的な千鳥の仲間としては、コチドリ、イカルチドリ、シロチドリ等が挙げられる。コチドリは、日本のチドリ科の中で最小の鳥で、主に夏鳥として渡来し、河原や砂浜などで繁殖する。イカルチドリは、コチドリより一回り大きく、やや嘴が長いところが特徴である。イカルチドリは、北海道から九州までの地域で繁殖し、北海道を除く地域で留鳥として分布している。シロチドリは、コチドリやイカルチドリと同様の模様をしているが、足が黒色であるため、その点で区別できる。シロチドリは、全国的に海岸付近で繁殖し、冬期は本州以南の地域で越冬する。(藤吉正明記)
【例句】
星崎の闇を見よとや啼千鳥
芭蕉「笈の小文」
一疋のはね馬もなし川千鳥
芭蕉「もとの水」
千鳥立更行初夜の日枝おろし
芭蕉「伊賀産湯」
汐汲や千鳥残して帰る海人
鬼貫「七車」
背戸口の入江にのぼる千鳥かな
丈草「猿蓑」
蠣殻や下駄の歯音に飛ぶ千鳥
暁台「あさかり」
仮まくら魚蔵(なくら)に千鳥降るがごとし
白雄「白雄句集」
上汐の千住を越ゆる千鳥かな
正岡子規「子規句集」
一つ一つ磐へこぼるゝ千鳥かな
原石鼎「花影」
ありあけの月をこぼるゝ千鳥かな
飯田蛇笏「山盧集」
子千鳥の親を走せ過ぎ走せかへし
中村草田男「美田」