燕帰る(つばめかえる、つばめかへる)仲秋
【子季語】
去ぬ燕、巣を去る燕、帰る燕、帰燕、秋燕、残る燕
【解説】
春に渡って来た燕は秋に南方へ帰ってゆく。夏の間に雛をかえし、九月頃群れをなして帰ってゆくと、淋しさが残る。
【科学的見解】
ツバメは、ツバメ科の野鳥で、日本では主に九州以北の地域で夏鳥として繁殖している。近縁種としては、コシアカツバメやイワツバメ、リュウキュウツバメ等が知られており、本種と比較してコシアカツバメは燕尾がより長く、イワツバメとリュウキュウツバメは燕尾がより短いところが特徴である。ツバメは、秋になると越冬のため、台湾・フィリピン・マレー半島地域に移動する。しかしながら、霞ケ浦や浜名湖畔、九州各地の地域では南へ渡らず、そのまま越冬する個体が確認されている。それらの日本で越冬する個体は、日本へ夏鳥として渡来していたツバメではなく、ツバメの亜種であり、大陸で繁殖を行っているアカハラツバメではないかと推測されている。(藤吉正明記)
【例句】
馬かりて燕追ひ行くわかれかな
北枝「卯辰集」
落日のなかを燕の帰るかな
蕪村「夜半叟句集」
乙鳥は妻子揃うて帰るなり
一茶「九番日記」
頂上や淋しき天と秋燕
鈴木花蓑「鈴木花蓑句集」
身をほそめとぶ帰燕あり月の空
川端茅舎「川端茅舎句集」
燕はやかへりて山河音もなし
加藤楸邨「火の記憶」